医療費負担や生産性損失を調査
非営利特定法人日本医療政策機構(HGPI)は1月16日、慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症の程度により、QOLや生産性損失がどのように異なるか、またそれらにより国内でどの程度の金銭的損失が起きうるのかについて調査を実施し、その結果を発表した。
(画像はプレスリリースより)
COPDは肺や気管支の炎症性疾患であり、国内外において疾病負担が大きい疾患として位置づけられ、有病者数、医療費ともに今後増加すると見込まれている。この疾患は、患者のQOLを低下させ、同時に労働者の生産性低下をもたらすものと考えられている。
年間1人あたり119万円損失
同調査では、QOL評価尺度EQ-5D (EuroQoL 5-dimension)を用いてCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者のQOLを測定。その結果、それぞれについて段階的にQOLスコアが低下したという。
また、COPD患者の方が健常者と比較して労働損失時間が有意に長く、COPDによる超過労働損失は年間1人あたり47.1万円と計算された。COPD患者年間1人あたりの医療費支出は72万円と推計され、生産性損失と合わせると約119万円となった。
さらに、同調査対象集団のCOPD患者233人のうちで、就業している患者は112人 (48.0%) であったという。この就業割合と、現在受療中の患者数・約22万人を採用した場合でも、患者全体での費用負担は医療費支出で72万円× 22万 = 1,584億円、生産性損失は47万円×48.0%×22万=496億円、あわせて2,080億円にのぼるとされる。
この金額には、就業者以外の家事労働などへの影響は組み込まれておらず、また潜在的なCOPD患者の生産性損失も含めていない。これらを組み込んだ場合は、総コストはさらに増大すると考えられているという。
これらの調査結果から、HGPIは、COPDの早期発見や治療体制の確立のほか、国民全体への認知啓発運動促進など、COPDに関する政策の方向性を提言している。(小林 周)
▼外部リンク
非営利特定法人日本医療政策機構 プレスリリース
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