米Medtronic社の発表を受け、緊急発表
日本不整脈学会(JHRS)は1月16日、米国・ミネアポリスのMedtronic, Inc. (以下、「Medtronic社」)が現地時間1月9日に行った腎動脈デナベーション治療に関する発表について、会員に対し、学会としての緊急の見解をホームページ上に掲載した。
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Medtronic社は、治療抵抗性高血圧に対する腎動脈デナベーション治療の有効性および安全性の確認を目的とし、米国における臨床試験、Symplicity HTN-3試験を実施していた。この治療法は、大動脈から分枝する腎動脈にそって存在する交感神経を高周波エネルギーで焼灼することによって交感神経系を抑制し、血圧を目標値に調整することを目指すものとして知られている。試験への参加施設は、87施設、対象患者は535名だったという。
同社による今回の試験は治療群に加えて、腎動脈内にカテーテルを挿入するものの高周波治療は行わない対照群をおいた初の無作為化比較試験として注目されていた。しかし発表によると、同試験の実施を通じて得られた結果は、安全性上の問題点は確認されなかったものの、事前に設定された十分な降圧効果が得られたことも確認できないというものだったという。Medtronic社では、今後データの詳細を分析する専門委員会を設け、学会および学術誌において、判明した事実を公表していく予定としている。
そして同社では、安全性上のなんらかの問題が生じたわけではないが、期待された降圧効果が得られなかった以上、倫理的な観点から、日本におけるHTN-Japan試験を含む、今後のこの腎動脈デナベーション治療に関するすべての治験をいったん中止することを決定、詳細な分析結果をみて将来的な方針を最終判断する予定であるとした。
日本における治療結果データは集積中、今後の検証を注視
日本不整脈学会によると、Symplisity HTN-Japan試験に参加した患者の治療効果に関しては、現在データが集積されつつある段階であり、有害事象等の安全性に関しては問題がなかったことを確認しているという。
同学会では、この腎動脈デナベーション治療を、有効な新規の治療法として、慎重かつ早期に日本国内へ導入することを目指し、日本高血圧学会・日本心血管インターベンション治療学会とともに活動してきていた。
すでに欧州・豪州を中心に、多くの患者において、良好な降圧効果が得られたとの報告を複数得てきていたことや、ヨーロッパの高血圧治療ガイドラインにも新規治療法として取り上げられているものであることなどから、今回の発表は非常な驚きをもってとらえているという。
そのうえで今後の詳細な検証内容を注視すべきとしつつ、今回のMedtronic社の試験結果は重大な発表であることから、いち早く会員に知らせるべきものであると判断したと締めくくっている。(紫音 裕)
▼外部リンク
日本不整脈学会 発表文書
http://jhrs.or.jp/com_ablation201401
Medtronic, Inc. プレスリリース
http://newsroom.medtronic.com/phoenix.zhtml