ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃炎の原因となるうえ、消化器がんを引き起こす発がん物質としても知られています。このピロリ菌に対する経口ワクチンの開発が進んでいます。すでに、ラットを使った実験では明らかな効果が確認されました。
(画像はプレスリリースより)
ヘリコバクター・ピロリ菌は、これまで予防ワクチンが開発されておらず、診断後に治療が行われていました。現在主流となっている治療は、複数の抗生物質とプロトンポンプ阻害薬と呼ばれる薬を用いる方法です。
けれども、抗生物質に対して耐性があったり、長期間の服薬治療を守ることができない患者さんがいたりで、治療の効果が上がらない現状がありました。実際、治療を行っても、除菌ができない患者さんが2割程度いるとされており、この割合は、特に発展途上国で高くなっていました。また、いったんは除菌に成功しても、再発する患者さんも15%から30%に及ぶとされていました。
中国南方医科大学の研究チームが開発した今回のワクチンは、ピロリ菌の抗原と、ヨーグルトなどに含まれているアシドフィルス菌を組み合わせたもので、注射ではなく「飲む」タイプです。ラットにこのワクチンを投与すると、血清の中のピロリ菌からの保護率が高くなりました。また、このワクチンを飲んだ後には、胃の粘膜の保護能力がアップすることも分かったのです。
臨床での使用までには、まだまだ数多くのプロセスを踏む必要がありますが、基本的な効果は確認できたとして、高く評価されているそうです。今後の開発が期待されますね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
H. pylori Vaccine Shows Promise in Mouse Studies
https://www.asm.org/index.php/asm-newsroom2/
Oral immunization with recombinant Lactobacillus acidophilus expressing the adhesin hp0410 of Helicobacter pylori induces mucosal and systemic immune responses
http://cdli.asm.org/content/early/2013/