産官学共同研究で発見、「PLOS ONE」に掲載
東京医科歯科大学の小川佳宏教授、菅波孝祥特任教授らと、山口大学、熊本大学、京都大学、大妻女子大学、ハートライフ病院、塩野義製薬株式会社が加わった共同研究チームが、肥満などを原因として発症する、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の重症度をはかる新たな方法を開発したと発表した。
この共同研究は、文部科学省及び厚生労働省科学研究費補助金などの支援のもと実施されたもので、その研究成果は科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に、米国東部時間の2013年12月11日付で掲載されている。
(画像はプレスリリースより)
肝臓における免疫細胞の特殊構造の数から判定
研究チームは、今回開発したNASH動物モデルとヒトNASH症例において、共通する特徴的な組織学的構造hCLS(hepatic crown-like structure)の存在を発見。このhCLSは、脂肪変性した肝細胞とマクロファージなどから構成され、肝臓の炎症や繊維化の原因となり、NASHの重症度に比例して出現することを突きとめた。
また、hCLSを構成するマクロファージは、他のマクロファージと表面マーカーや性質が異なり、明確に区別できたという。さらに同程度に肝障害が生じている慢性ウイルス性肝炎症例ではhCLSはほとんど認められず、NASHに特徴的な病理組織マーカーであることが確認されたそうだ。単純性脂肪肝からNASHの発症にhCLSが深く関与しているとみられる。
これまでNASHに関しては、その発症機序にも不明点が多く、確定診断には侵襲的肝生検が必要であること、現状有効な治療法が確立されていないことが大きな問題点としてあった。
今回の研究成果は、こうしたNASHについてその病態の解明に重要な知見をもたらすものであるほか、新規バイオマーカーの探索に加え、新たな治療法の開発につながると期待されている。(紫音 裕)
▼外部リンク
東京医科歯科大学 プレスリリース
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/
山口大学 プレスリリース
http://www.yamaguchi-u.ac.jp/topics/2013/_3094.html
PLOS ONE : Hepatic Crown-Like Structure: A Unique Histological Feature in Non-Alcoholic Steatohepatitis in Mice and Humans
http://www.plosone.org/article/