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GSK PTSD薬物療法に関するセミナーを開催

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2013年12月27日 PM05:00

パキシル錠、日本初のPTSD治療薬として追加承認

外傷後ストレス障害()とは、死の恐怖にさらされるような事故や災害などの衝撃的な出来事を経験することによって起こる精神疾患。(1)侵入症状群(2)回避(3)認知や気分の異常(4)過覚醒 の4つのカテゴリーの症状が1か月以上持続し、大きな苦痛や社会生活などへの影響をもたらす。日本では、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件から注目が高まった疾患だ。

2013年11月22日、「(R)錠」(一般名:パロキセチン)が、PTSD治療薬として追加承認された。これを受け、グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)が12月5日にセミナーを開催。日本トラウマティック・ストレス学会(JSTSS)から3人の先生が登壇し、「外傷後ストレス障害(PTSD)薬物療法への期待~学会による早期承認要望とその背景~」と題して、同学会がPTSD治療に対するSSRIの早期承認を要望するに至った経緯や、PTSD治療に関する実態調査の結果、PTSD治療のガイドラインの作成目的・背景について講演した。

PTSD発症が危惧された東日本大震災


国立成育医療研究センター こころの診療部
部長 奥山眞紀子先生

はじめに、JSTSSの会長であり、国立成育医療研究センター こころの診療部 部長 奥山眞紀子先生が登壇。同学会が早期承認を要請するに至った経緯を語った。

甚大な被害のあった2011年3月の東日本大震災後、トラウマティックな体験をしただろう多くの被災者のPTSD発症が危惧されていた、と奥山先生。それと同時に、特に被害の大きかった東北地方において、PTSDを診ることができる専門医は少なく、内科医などのプライマリケア医がPTSDの治療に関わることが推測されたという。

PTSD治療において効果が高いとされている認知行動療法などの心理治療を行うには、専門の知識や時間が必要なことから、薬物治療の重要性が高まっていた。しかし、当時の日本では、海外で有効性が認められているPTSD治療薬がすべて未承認という状況だった。

以上のことから、JSTSSと日本不安障害学会は、2011年4月にPTSD治療薬の早期承認・保険適応を求める要望書を厚生労働省及びGSKへ提出、今回の承認に至ったという。早期承認要望を提出するにあたってJSTSSが行ったのは、▽SSRIの効果が国内外で公知であることを明らかにするための文献レビュー ▽日本におけるPTSD薬物療法の実態調査 ▽診断・治療の質の統一を図るためのガイドライン作成 の3つ。なお、承認申請は、公知申請制度に基づき進められた。

奥村先生は、PTSDの治療の選択として、まずは「安全な生活の確保」が大切だと強調。そののちに、患者への心理教育やリラクセーション、そして心理治療や薬物治療を行うことが望ましいと語った。

PTSD患者の66%にSSRIが使われていた


防衛医科大学校 精神科学講座 講師 重村淳先生

続いて、防衛医科大学校 精神科学講座 講師 重村淳先生が、JSTSSが実施した、日本におけるPTSD治療の実態調査について講演した。調査は全国12施設で2011年6月~2012年5月に行われ、その対象は、はじめてPTSDと診断され、薬物療法を受けた58人。PTSD治療に使用された薬剤や、国内外の治療方針の違いなどについて後ろ向き調査が行われた。その結果、海外での治療方針とほぼ同様に、66%の患者にSSRIが使われていたこと、SSRIを使用した患者では61%に中等度改善が認められたことがわかった。

さらに重村先生は、海外のPTSD治療アルゴリズムを例に挙げた。PTSD治療では、うつ・不眠・アルコール依存などの併存疾患を評価した上で、病状を診断・評価し、薬物療法を行うことが重要と語った。また、PTSDが不安障害の1つとされていることもあり、日本では抗不安薬が使われている例が多いが、海外のPTSDガイドライン(National Center for PTSD)での抗不安薬のエビデンスは少なく、依存性が高い、不安を和らげる効果が確認できないなどの理由から、安易に使用するべきではないと述べた。

プライマリケア医向けPTSD薬物治療ガイドラインを作成


福島県立医科大学医学部 災害こころの医学講座
教授 前田正治先生

最後に、JSTSSが2013年9月に発表した、「PTSDの薬物療法ガイドライン:プライマリケア医のために」と、「PTSD初期対応マニュアル:プライマリケア医のために」について、福島県立医科大学医学部 災害こころの医学講座 教授 前田正治先生が講演した。

PTSDが疑われる患者は、さまざまな身体症状を訴えて受診することが少なくなく、プライマリケア医が身体症状の評価や対応を求められるケースが増えていた。さらに、被災地である東北地方において、PTSD治療の専門医は少なく、プライマリケア医が診断にあたることが推測されたことから、早期承認要望を提出した後に、厚労省からプライマリケア医向けのガイドライン作成の要請があったという。

ガイドラインでは、一般的にPTSDの治療は専門医が行うことが好ましいとしたうえで、PTSDが疑われる患者への対応や、診断方法、PTSD治療の進め方などをまとめている。患者への社会支援や疾患説明(心理教育)の重要性を強調しているのが特徴だ。さらに、現場で速やかにガイドラインを実施するために、簡易版である「PTSDの初期対応マニュアル」も作成した。

前田先生は最後に、薬物療法を行う際の重要なポイントとして、薬物療法を行う前の患者教育が重要であること、かかりつけ医だけでは治療が難しい場合があるので、なるべく専門医に紹介してもらうことが理想であることの2点を述べ、講演を終えた。

今後、JSTSSでは、現在も実施している被災地でのプライマリケア医向けの研修会を引き続き行うなど、PTSD治療が適切に行われるための努力を続けていくとのことだ。

▼外部リンク

グラクソ・スミスクライン株式会社 プレスリリース
http://glaxosmithkline.co.jp/press/

日本トラウマティック・ストレス学会
http://www.jstss.org/

PTSDの薬物療法ガイドライン:プライマリケア医のために
http://www.jstss.org/

PTSD初期対応マニュアル:プライマリケア医のために
http://www.jstss.org/

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