マイクロアレイ技術を応用した診断システム
独立行政法人理化学研究所は12月19日、理研創発物性科学研究センター・創発生体工学材料研究チームの伊藤嘉浩チームリーダーらと、理研ベンチャーのコンソナルバイオテクノロジーズによる共同研究により、ヒトの血液中にある感染症ウイルスに対する抗体の種類および抗体価を全自動で測定する「ウイルス・マイクロアレイ診断システム」を開発したと発表した。
(画像はプレスリリースより)
多種類の感染症に対する抗体を同時診断
「ウイルス・マイクロアレイ診断システム」は、多くの種類の感染症ウイルスの免疫について、同時かつ迅速に測定できるという。従来の方法では、免疫履歴を調べるには採取した血液を検査センターに送り、はしかや風疹といった免疫項目ごとに獲得履歴を確認し、結果が出るまでに5日ほどを要していた。
今回開発された診断システムでは、採取した血液(分離血清)を使って医療現場で複数の免疫項目について同時に検査を行い、15分程度という短時間での測定が可能となるという。その精度は、検査センターなどで行われている酵素免疫測定法(EIA法)と、ほぼ同程度であり、コストの面では試薬や装置の生産コストを5分の1程度に抑えることができるとしている。
感染流行時・海外渡航前・医療従事者などのワクチン接種の必要性判断に有効
老人福祉施設や介護施設、教育現場などでは、集団感染防止の観点からワクチン接種が重視されている。また近年の、はしかや風疹の流行のような一度は制圧したかに思われた感染症が再び流行する「再興感染症」への対応としてもワクチン接種が有効である。
医療の現場で、簡単かつ迅速に抗体価を調べることが可能となり、個人がこれまでに獲得した免疫履歴が分かるようになれば、ワクチン接種の必要性などをその場で容易に判断できるようになる。また、低コストで正確に一人一人の免疫獲得の履歴を知ることができれば、効率的なワクチン接種により感染症の拡大を防止することができる。その他にも、妊娠前の女性に対する検査、インフルエンザなどの予防接種ワクチンによる免疫獲得の確認、海外渡航前のワクチン予防接種の必要性の判断にも役立つと期待される。(鈴木ミホ)
▼外部リンク
独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
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