日本と台湾は、国交がないため、日本交流協会と亜東関係協会がパイプ役となり、両国間で貿易や経済、技術交流を図ってきた。これまで両者は、航空自由化や電気製品分野の相互承認などで協定を結んでおり、11月に電子商取引、鉄道、知的財産権、遭難航空機海上救助、薬事規制協力枠組協定等の五つの協定や覚書を調印した。また、バイオ産業分野では、生技医薬産業発展推動小組(BPIPO)のもと、産業連携が進められ、昨年3月には台湾経済部に台日産業連携推進オフィス(TJPO)が立ち上がった。
台湾では、国際的な薬事環境に対応するべく、10年1月には、医薬品・医療機器の承認審査を行う主管として「台湾食品薬物管理局」(TFDA)を設置。米FDAや欧州EMAなどと連携する審査体制を整えた。今年3月には、GMP調査の国際的枠組み「医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム」(PIC/S)に加盟した。現在、2630億台湾ドル(約9053億円)の市場規模までに成長している。
医薬品・医療機器のグローバル開発拠点として国主導で整備が進む。台湾政府が出資する最先端の研究機関との共同研究や、非臨床試験、臨床試験を受託するCRO、バイオ医薬品の細胞株から量産化までを受託するCMOを活用でき、早期に製品化可能な支援体制を構築。また、20~30社のベンチャーファンドが有望なシーズを持ちながらも、資金調達に苦しむ海外のベンチャー企業の誘致を呼び込み、バイオ産業の活性化を目指す方針を打ち出す。
呉氏は、「過去10年は欧米からいろいろ学んできたが、今後は日本から学びたい」と述べ、今回の協定の発効を歓迎する。まずは、医薬品の輸出入許可で二重の立ち入り審査を撤廃する。台湾メーカーが製造した医薬品を日本に輸出する場合、別途日本の医薬品医療機器総合機構から製造施設への立ち入り審査を受けなければならないが、台湾当局に提出した証明書類の提示だけで対応できるようにしたい考えだ。
さらに、医薬品の承認審査も日台で統一し、台湾で承認された品目を日本国内で販売できるよう協議を進める。呉氏は、「日本のシーズを台湾企業に導出し、台湾で医薬品開発を行い、承認取得後に日本へ逆輸入する方向性もあり得る。もっとも大事なのは、日台連携でグローバル市場に進出していくこと」と話す。
その一つが、巨大な中国市場への進出だ。台湾と中国は数年前から、バイオ産業に関する薬事規制で協定を結び、医薬品の承認審査で相互認証を行って、台湾で承認取得した製品が中国市場に投入できる。
特に知的財産権の保護に関して緊密な協力関係を築いている。中国で特許権侵害を受けた日本のゲームソフト企業が、台湾ルートで保護された事例もあるという。中国市場への進出を目指す日系製薬企業に対し、呉氏は「今回の協定が利益をもたらすと思う」と述べた。