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東大などの共同研究グループ 熱帯熱マラリア原虫に対するALAと鉄の相乗的増殖阻害メカニズムを解明

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2013年12月17日 AM06:00

5-アミノレブリン酸と2価の鉄の組み合わせ

東京大学と東京工業大学、英国のMRC National Institute for Medical Research、SBIファーマ株式会社の4者は12月3日、共同で行った研究によって、5-アミノレブリン酸(ALA)と2価の鉄が熱帯熱マラリア原虫の生育・増殖を相乗的に阻害する作用メカニズムの一端を解明したと発表した。この研究成果は、12月2日発刊の米専門誌「The Journal of Biochemistry」に掲載されている。

ALAは、体内でヘムの原料となる重要なアミノ酸であり、がん細胞においてはその環境下でのみポルフィリンに代謝されるという特性があることから、脳腫瘍の術中診断薬としても認められている。

このALAをマラリア患者に投与すると、感染した細胞にポルフィリンが蓄積され、それを手がかりに光照射でマラリア原虫を殺せるということはすでに判明していた。しかし、血液に光照射を行うことは現実的でないため、これを伴わないALA薬剤の開発が望まれてきた。

そうしたなか、2011年に、東京大学大学院医学系研究科の北潔教授と、東京工業大学大学院生命理工学研究科の小倉俊一郎准教授、SBIファーマ株式会社らは、もっとも毒性の強い熱帯熱マラリア原虫であるP. falciparum 3D7株を用いた研究で、コバルトや亜鉛、マグネシウム、ニッケルなど、複数の物質とALAの組み合わせを検討した結果、ALAと2価鉄の併用で、光照射することなく熱帯熱マラリア原虫の生育を阻害できることを発見、学会でその旨を発表していた。

(画像はwikiメディアより引用 参考イメージ)

研究を進め、メカニズムの一端も解明、新規マラリア治療薬の開発に期待

この発表から、MRC National Institute for Medical Researchも研究に加わることとなり、マラリア原虫の各オルガネラにおけるポルフィリン類の分析を進めていた。

その結果、ALA投与時のマラリア原虫ポルフィリンでは、coproporphyrin1(CP1)、coproporphyrin3(CP3)、protoporphrin 9(PP9)が検出され、なかでもCP3の濃度がもっとも高く、それぞれのオルガネラにおけるポルフィリンの分布は、リング期ではアピコプラストに、トロホゾイト期、シゾント期では食胞に局在していることが確認された。このことから、特定のオルガネラにおけるポルフィリンの蓄積がマラリア原虫の増殖阻害作用に深く関わっていることが明らかとなったという。

さらに研究グループでは、ALAと2価鉄塩類のなかでももっとも効果的であったクエン酸第一鉄ナトリウムに、抗酸化物質であるビタミンCを添加したところ、マラリア原虫の増殖阻害作用が弱まってしまうことを確認。ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムによって作られる活性酸素がマラリア原虫の増殖阻害に重要な関わりをもつことが考えられるとの結論に至った。

ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせによる投与は、すでに動物での試験も開始しており、良好な結果が得られつつあるほか、健常人での第1相試験も終了し、安全性が証明されているという。

またALA、クエン酸第一鉄ナトリウムのそれぞれがすでに安全性が確認され、食品や医薬品で利用されているものであるほか、その合剤は抗がん剤誘起貧血の治療薬として、英国で第1相試験が終了しているなど、抗マラリア薬として早期に臨床開発に移れる環境が整っているといえる。

既存の抗マラリア治療薬は、失明の危険など強い副作用が知られ、問題となっているほか、マラリア予防ワクチンの研究も精力的に行われているものの、効果的なワクチン開発には至っていない。

よって研究グループでは、ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムの合剤が、今後予防的にも服用可能な画期的抗マラリア薬となり、将来のマラリア根絶にも役立つことが期待されるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク

東京大学/東京工業大学/MRC National Institute for Medical Research/SBIファーマ株式会社 プレスリリース
http://www.titech.ac.jp/news/pdf/

Synergy of ferrous ion on 5-aminolevulinic acid-mediated growth inhiblition of Plasmodium falciparum
http://jb.oxfordjournals.org/content/

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