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日本の糖尿病患者におけるHbA1cの重要性認識低く、課題も浮き彫りに

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2013年12月17日 PM07:03

ノバルティス ファーマAGの世界6カ国調査で判明

スイスのノバルティス ファーマAGは、12月3日に開催された国際糖尿病連合(IDF)の世界会議2013において、日本を含む世界6カ国での2型糖尿病にかかわる医師と患者を対象にした糖尿病に関する実態調査「Time 2 Do More in Diabetes」の結果を発表した。

対象となった6カ国は、米国、英国、スペイン、日本、インド、ブラジル。調査は2型糖尿病治療における現状の課題を、医師と患者の両方の観点から明らかにすることを通じ、より良い治療のあり方をとらえ直す目的で実施された。米国糖尿病協会(ADA)や欧州糖尿病学会(EASD)で開催された運営委員会監修のもと、2型糖尿病治療に関わる医師337名と患者652名の計989名に対して行われている。方式はオンライン調査で、日本からは医師56名(うち専門医16名、一般開業医/内科医40名)、患者101名が参加している。

調査結果では、2型糖尿病の疾患や治療に関する医師の説明の程度と、患者側の理解や記憶の程度に差があること、患者の血糖コントロールについての取り組みにおける不十分な点などが明らかとなっており、現場での糖尿病管理上の課題が浮かび上がるものとなったという。

(この画像はイメージです)

日本は理解度最低、とくにHbA1cの重要性認識が低い傾向に

世界6カ国調査の結果、医師は、目標の血糖値を達成できる患者は全体の半数程度と予想しており、血糖コントロールへの期待値はあまり高くないことが判明した。診断時の糖尿病に関する主要テーマとして、「生活習慣の見直し/食事・運動療法」「疾患とその原因」「薬物治療」「2型糖尿病のリスクと合併症」「HbA1cの重要性」の5つを設定し、その説明状況を問うたところ、5つすべてを患者に説明したという医師は、すべての国で8割を超え、十分な説明を行っているという認識については、各国の差はみられなかったという。

一方、患者側では、生活習慣の改善が重要という医師からの指導を受けたものの、「運動量の改善」を実施できているという人は全体の40%にとどまり、また「医師から勧められた食習慣に変える」ことができた人も49%と半数に届かなかった。また、4分の3の患者が糖尿病の合併症発症をあまり気にしていないか、現在その危機はなさそうだと感じているということも明らかになった。

日本の調査結果からは、医師からの説明に関する患者の理解度が不十分であることが浮き彫りとなっている。「低血糖とその治療」や「治療費」「副作用」についての理解では、それぞれ順に15%、16%、19%といずれも2割以下しか理解しておらず、比較的高い理解度であった「食事・運動の生活習慣の改善」(51%)、「血糖値コントロールの重要性」(39%)、「薬物治療」(38%)、「潜在的なリスクと合併症」(36%)などにおいても、調査対象の他国と比較して、全項目でもっとも低い結果となったという。

先述の5つの主要テーマのうちでは「HbA1cの重要性」が49%ともっとも記憶されている割合が低く、6カ国中でも最低で、日本以外の調査国はすべて6割以上が記憶していたという。この結果は、今後日本におけるHbA1cのさらなる啓発が必要不可欠であることを示しているといえる。

記憶している項目でも、実践率低め

説明について日本の患者がもっとも記憶していたのは「生活習慣の見直し」(75%)だったが、医師の指導後、実際に食生活の改善を行っているのは27%で、4~6割が実施している他の5カ国に比べて最低の結果となった。

運動量を増やす取り組みも日本では27%で、こちらは他国も半数未満と不十分な結果が出ているものの、6カ国中最低の英国(21%)に次ぐ低い値となっている。

この調査結果では、日本における2型糖尿病患者の血糖値管理の重要性やリスクに対する理解・認識の低さが明らかとなっており、この点はおおいに今後の改善が望まれる。また食生活や運動習慣の改善といった実際の生活改善は難しいものだが、実践した患者が4分の1程度という結果は厳しいものであり、より実行可能な非薬物療法への取り組みの必要性も示されたといえるだろう。(紫音 裕)

▼外部リンク

ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース
http://www.novartis.co.jp/news/2013/

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