40年ぶりの新薬となるか
大塚製薬株式会社は、欧州の医薬品委員会(Committee for Medical Products for Human Use:CHMP)が、同社の再審査要請に応じて、多剤耐性結核の治療薬「デラマニド」の販売承認を推奨したことを、11月25日発表した。正式に承認されれば、欧州での抗結核薬としては、約40年ぶりの新薬となる。
(画像はプレスリリースより)
結核菌の細胞壁生成を阻害する「デラマニド」
現在、世界人口の約3分の1が結核菌に感染し、毎年860万人が発症し、130万人が死亡している。欧州では、多剤耐性結核は希少疾病として指定されている。
大塚製薬の創製した開発中の「デラマニド」は、ニトロ−ジヒドロ−イミダゾオキサゾールに分類され、結核菌の細胞壁を構成するミコール酸の生成を阻害することで効果を発揮する、新しい作用メカニズムの治療薬である。現在グローバル臨床第3相試験が進行中であり、多剤耐性結核の標準治療(OBR)への上乗せによる「デラマニド」の6か月間の治療効果を検証しているという。
標準治療との併用で明らかな効果
今年7月に、CHMPでは「デラマニド」について否定的な意見が挙げられたが、大塚製薬が再審査を要求、申請時のデータに関する治療効果の持続性を裏付ける追加解析と、現在進行中の臨床試験に加えて用法・用量の適切化を図る新たな臨床試験の実施により、今回の販売承認の推奨を得るに至った。
世界9ヵ国、17施設における多剤耐性結核患者481名を対象とした臨床第2相試験(204試験)では、喀痰の培養による結核菌検出評価(SCC)を実施し、治療2か月間でデラマニド併用では45.4%の患者で結核菌が消失していたという(デラマニド非使用群では29.6%)。204試験参加者の2年間の追跡では、デラマニドを少なくとも6か月間投与されていた213名における死亡は6名(2.9%)のみであり、有意に死亡率が抑制されていたとしている。
多剤耐性結核が世界中で問題となる中、こうした新しい結核治療薬による選択肢の創出は重要である。今回の承認推奨をもとに、大塚製薬は「デラマニド」について標準治療OBRとの併用療法として、欧州委員会による販売承認の最終判断を待つこととなる。(長澤 直)
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大塚製薬株式会社 プレスリリース
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