細胞の細菌排除鍵分子
東北大学大学院生命科学研究科の有本博一教授らの研究グループは、シグナル伝達分子8-ニトロサイクリックGMPが、細胞内からの細菌排除を促進する鍵分子であることを発見したと発表した。この研究結果は、米国の科学雑誌「Molecular Cell」オンライン版に現地時間11月21日付で掲載されている。
(画像はプレスリリースより)
8-ニトロサイクリック GMP
身体は、細胞内に侵入した異物を選んで取り除くという仕組みを持っている。そのための目印は、何らかの分子が担うと考えられていたが、詳細は分かっていなかった。
今回の研究で、一酸化窒素の分解で生成する8-ニトロサイクリックGMPという分子が、細菌の表面に結合して、選択的オートファジーで分解するための目印となっていることを発見したという。
さらに、この分子を細胞外から補うことによって、細菌の排除が促進されることも分かった。つまり、細菌を直接殺す抗菌薬を用いなくても、細菌に目印をつける過程を補助することで、人間が本来持っている免疫機能によって細菌を排除できるということになる。
細菌感染のメカニズムと研究結果による今後への期待
細菌感染が起きると、人間の細胞は防御のために一酸化窒素をつくる。これまでは、一酸化窒素が直接細菌を攻撃してダメージを与え、殺菌すると考えられていた。
細菌が排除されるオートファジーでは、同様の目印としてユビキチン鎖というタンパク質からなる標識が知られていた。今回の研究により、細菌表面にまず8-ニトロcGMPが結合し、その後ユビキチン鎖が付加されることが判明した。つまり、8-ニトロサイクリックGMPは、排除するべき異物の目印のうちで最も初期に活躍する分子であるということが分かったとしている。
この研究結果により、細菌感染症の新たな治療法の開拓が期待される。(たなか牡丹)
▼外部リンク
東北大学プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp
Endogenous Nitrated Nucleotide Is a Key Mediator of Autophagy and Innate Defense against Bacteria
http://www.cell.com/molecular-cell/abstract/