細胞内カルシウム濃度の上昇が作用
北海道大学大学院医学研究科・細胞生理学分野の研究室が、細胞が外来物質を取り込むメカニズムを解明したと発表した。この研究結果は、米専門誌「Nature Communications」に現地時間11月14日付で公開されている。
(画像はプレスリリースより)
同大学の研究室は、蛍光バイオイメージング手法を用い、外来因子の一例としてデキストラン、トランスフェリン、インフルエンザウイルス粒子が細胞に取り込まれる様子を捉えた。それらが細胞内に取り込まれる際に活性化する、宿主細胞側シグナル伝達因子群の動態を生きた細胞内で評価した。
その結果、インフルエンザウイルスが宿主細胞に侵入する際に、細胞内カルシウム濃度の一過性上昇が複数回生じ、細胞内のカルシウムを抑制すると、ウイルスの侵入と感染が著しく阻害されたという。
また、カルシウム上昇を維持する機構として、カルシウム濃度上昇、RhoA活性化、カルシウム濃度上昇という循環するシグナル経路があるということを発見。いくつかのエンドサイトーシス経路が亢進し、そのエンドサイトーシスに乗じてウイルスが細胞に侵入するということが明らかになったとしている。
今後の研究や創薬に期待
インフルエンザウイルスは、頻繁な変異獲得がその対策上問題となっている。今回の研究により、変異が生じる核内でのウイルスRNA複製より前のステップである細胞侵入の機構が明らかになったため、耐性を生じにくい創薬への発展が期待される。(たなか牡丹)
▼外部リンク
北海道大学プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/news/131114_pr_med.pdf
A Ca2+-dependent signalling circuit regulates influenza A virus internalization and infection
http://www.nature.com/ncomms/2013/131114/