国立がん研究センターが発表
独立行政法人国立がん研究センターは11月21日、胆道がんに分類される肝内胆管がんの治療標的となる、新たながん遺伝子を発見したと発表した。また、さらにその遺伝子の働きを阻害する薬剤の特定にも成功したという。
この研究は、国立がん研究センター研究所 がんゲノミクス研究分野 柴田龍弘分野長による研究の成果。米科学誌「Hepatology」に論文が掲載される予定となっており、現在、先行して同誌オンライン版で公開されている。
(画像はプレスリリースより)
日本人胆管がん症例からFGFR2融合遺伝子2つを同定
発表によると、研究では国立がん研究センターのバイオバンクに集められた日本人の胆管がん症例を対象に、高速シークエンサーで発現している遺伝子のRNAシークエンスを実施。新たながん遺伝子として機能するFGFR2融合遺伝子を2つ同定したという。
このFGFR2融合遺伝子は、肝内胆管がんの約14%にあたる66人中9人で認められ、肺がんや大腸がんにみられるKRAS遺伝子やBRAF遺伝子の変異とは相互排他的であることが分かったそうだ。研究では、FGFR2融合遺伝子陽性のがん細胞を正確に診断する分子診断法の開発にも成功している。
胆道がん初の分子標的薬開発に向け期待
また、細胞株を用いた実験を通じ、がん遺伝子による細胞増殖が2種類の低分子FGFR阻害剤によって選択的に阻害されたことも確認しているという。
国立がん研究センターでは、同中央病院、東病院のほか、全国にある複数の施設において、さらに胆道がん患者の情報を収集し、今回開発したFGFR2陽性がん細胞を同定する分子診断法を確立するとともに、FGFR2融合遺伝子の臨床病理学的特徴および分子生物学的特徴を明らかにすべく、観察研究を進め、来年2014年早期には、日本国内の臨床試験を開始できるよう努めていくとしている。
アンメットメディカルニーズの高い胆道がんにおいて、初の分子標的薬開発につながる研究成果であり、今後の進展が期待される。(紫音 裕)
▼外部リンク
独立行政法人国立がん研究センター プレスリリース
http://www.ncc.go.jp/jp/information/
Hepatology : FGFR2 tyrosine kinase fusions define a unique molecular subtype of cholangiocarcinoma
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/