東北大学加齢医学研究所が発表
東北大学加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門の川島隆太教授および竹内光准教授らの研究グループは、11月21日、小児における長時間にわたるTV視聴の習慣が、脳の前頭極をはじめとした高次認知機能領域の発達性変化や言語性知能に悪影響を与えていることを確認したと発表した。
発達期の小児におけるTV視聴に関し、その悪影響を指摘する声は、心理学研究などの分野を中心に多く見られるが、今回の研究では、脳画像解析、大規模なデータ、数年の期間をおいた縦断解析といったさまざまな手法を用いて、科学的にその悪影響の神経メカニズムを明らかにし、従来にない画期的な成果を得ており、注目を集めるものとなっている。なお、この研究成果は、英国神経科学雑誌「Cerebral Cortex」オンライン版に11月20日付で掲載された。
(画像はプレスリリースより)
健常小児におけるTV視聴生活習慣が脳形態や言語機能に影響
研究では、一般から募集した、悪性腫瘍や意識喪失を伴う外傷経験の既往歴のない健常小児を対象とした。まずTV視聴を含む生活習慣などの質問に答えてもらい、知能検査、MRI撮像を実施。この時点での参加者の年齢は5~18歳(平均約11歳)であったという。そしてこの研究参加者の一部に、3年後、再び知能検査とMRI撮像を行った。
初回参加時276名のデータをまず解析し、TV視聴時間と言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の灰白質量、白質量の関連を調べた。次に、216名の初回と2回目の参加時のデータを解析し、初回参加時におけるTV視聴時間が、どのように各参加者の2回目参加時における言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の灰白質量、白質量の変化を予測していたかを解析したという。これら解析においては、性別や年齢、親の教育歴、収入といった種々の交絡因子の補正を行っている。
全解析の結果、初回参加時における長時間のTV視聴時間は、数年後の言語性知能低下を予測しており、同様に前頭極領域、運動感覚領域、視床下部周辺領域の発達性変化で、灰白質体積の減少が少ないという負の影響のあらわれと関連していることが確認されたという。また言語性知能は、前頭極領域において局所の灰白質量と負に相関していることも明らかとなったとしている。
小児科学会の提言などを裏付ける研究結果に
研究グループでは、今回の研究成果から、小児における長時間のTV視聴で、脳の高次認知機能に関連する領域が影響を受け、言語能力の低下とも関連することが示唆されるとしている。
乳幼児におけるTV視聴の悪影響については、日本や米国など小児科学会から注意を促す提言がなされているが、今回の研究結果は、そうした注意の正当性を裏付けるものであり、発達期の小児における長時間のTV視聴には一層の注意が必要であることが判明したものと考えられる。(紫音 裕)
▼外部リンク
東北大学加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/
The Impact of Television Viewing on Brain Structures: Cross-Sectional and Longitudinal Analyses
http://cercor.oxfordjournals.org/content/early/2013/