■厚労研究班が検討開始
増加する専門薬剤師制度を整備するため、厚生労働科学研究班「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究」(主任研究者:乾賢一京都薬科大学学長)は、分担研究として検討に乗り出した。チーム医療が重視される中、特定領域に精通した専門薬剤師は増加の一途をたどっているが、これまで学会等の団体が独自に認定基準を設定していた。そのため、研究班では、現状の専門薬剤師制度の問題点を整理していく考えだ。
2006年にスタートした専門薬剤師制度は、本紙の調べによると、日本病院薬剤師会の「精神科専門薬剤師」「HIV感染症専門薬剤師」「妊婦・授乳婦専門薬剤師」「感染制御専門薬剤師」、日本医療薬学会の「薬物療法専門薬剤師」「がん専門薬剤師」、日本医薬品情報学会の「医薬品情報専門薬剤師」、日本腎臓病薬物療法学会の「腎臓病薬物療法専門薬剤師」、日本静脈経腸栄養学会の「栄養サポート専門薬剤師」などがある(表参照)
また、認定薬剤師制度については、専門薬剤師を相当上回る数となっている。具体的に見ると、日本化学療法学会の「抗菌化学療法認定薬剤師」、日本緩和医療薬学会の「緩和薬物療法認定薬剤師」、日本小児臨床薬理学会の「小児薬物療法認定薬剤師」、日本臨床救急医学会の「救急認定薬剤師」、日本プライマリ・ケア学会の「プライマリ・ケア認定薬剤師」などの約20領域に達しており、これら認定制度が今後、専門薬剤師制度に発展する可能性もある。
ただ、チーム医療が重視され、薬剤師の活動範囲が広がるに伴って多くの認定・専門薬剤師制度が立ち上げられてきたが、一方で各団体・学会が独自の認定基準を設けているため、質の担保について問題意識が示されてきた。
実際、08年には日本学術会議が「専門薬剤師の質の保証には、第三者機関により保証された研修・認定の仕組みが不可欠」と提言している。先行する医師の専門医制度でも、質の確保を目指す第三者組織が発足した。
こうした状況を受け、研究班は、現段階で専門薬剤師制度をめぐる問題点を整理し、社会が求める「専門薬剤師像」を検討していくことになる。
将来的には、第三者機関による認証を視野に、専門薬剤師制度を整備するための基盤づくりも行っていく予定。チーム医療の他の医療職や患者も理解できる内容の専門薬剤師制度を整備していく方向を目指す。
表:薬剤師が取得できる主な専門薬剤師制度(本社調べ)