白内障手術を取り巻く医療経済の現状
公益財団法人 日本眼科学会と公益社団法人 日本眼科医会が運営する日本眼科啓発会議の記者発表会が11月7日、都内で行われた。「国民の眼を守るために 危機に瀕する白内障手術 高い社会貢献度とディスポ製品のコスト増のはざまで」と題された今回の記者発表会では、筑波大学 医学医療系眼科の大鹿哲郎教授と国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 上席主任研究官の平塚義宗先生が講演を行った。
(この画像はイメージです)
低侵襲化が進む一方、コストが増加する白内障手術
高齢化が進むにつれ、有病率が上昇している白内障。その手術件数は、この20年で約4倍に増加し、2012年は120万件を超える手術が行われた。また、術式の変化、ディスポ製品の使用増加などにより低侵襲化が大幅に進み、合併症のリスクも大幅に低下したという。
しかし、乱視を矯正できるトーリック眼内レンズなど、性能は良いが高価な新型眼内レンズの登場、ディスポ製品の使用量増加などにより、手術経費が高騰。その割合は診療報酬の85%を占めるという。加えて、超音波乳化吸引術など、術式の変化によって必要となる装置・器具も高額化。初期投資費用も増加している。
日本の白内障手術に関する診療報酬は、欧米先進国と比べて低く、トーリック眼内レンズのような高性能な新型レンズを使用する場合、患者の負担が増加。性能が良いレンズの普及が遅れている原因の1つと考えられている。
QOL向上のために望まれる医療報酬の見直し
現状の白内障手術に対する医療報酬は、医療の進歩によって増したメリットと金銭的負担との間にギャップが生じており、患者がそのメリットを享受する機会を妨げていると考えられる。さらなる高齢化を迎える日本では、白内障の患者数は今後も増加することが予想されている。同会議では、1人でも多くの白内障患者がより良い治療を受けられるよう、医療報酬の早急な見直しを要望している。(QLifePro編集部)
▼外部リンク
日本眼科啓発会議 ホームページ
http://www.ganka-kaigi.org/