2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者対象の国内試験を中止に
協和発酵キリン株式会社は11月11日、米テキサス州のリアタ ファーマシューティカルズ(以下「リアタ社」)から導入した低分子化合物「バルドキソロンメチル」(開発番号:RTA 402)に関し、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象とした日本国内での第2相臨床試験の中止を決定したと発表した。
この臨床試験は、現在中断されていたもので、今回の発表で正式に中止されることとなった。協和発酵キリンでは、今後RTA 402の新たな開発方針について、検討を進めるとしている。
バルドキソロンメチル(RTA 402)は、転写因子Nrf2を活性化、細胞内の抗酸化因子を増加させるほか、炎症のシグナル経路を抑制することで組織を炎症から保護することができるとしている。慢性の炎症は、2型糖尿病や、心血管イベント・慢性腎不全などの合併症を促進することが知られているため、RTA 402による保護効果が期待されていた。
(wikiメディアより引用 参考イメージ)
心不全の発現リスク上昇、詳細は解析中
発表によると、RTA 402の導入元であるリアタ社は、米国・欧州・カナダ・オーストラリア・中米で、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象に、第3相プラセボ対照比較試験(以下「BEACON試験」)を実施していたが、安全性上の懸念があると独立データモニタリング委員会から中止勧告を受け、2012年10月に同試験を中止していたという。
得られたBEACON試験の結果は、11月7日から11月10日までの期間、米ジョージア州アトランタで開催された「2013年米国腎臓学会年次総会」で発表されたほか、医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されている。
BEACON試験の結果によると、試験期間中における患者の全死亡は、RTA 402群とプラセボ群に有意な差はみられなかったという。しかし、心不全による入院または死亡がRTA 402群でプラセボ群に比べ有意に多く、同剤による心血管イベント、とくに心不全の発現リスクが上昇することが示唆された。
主要評価項目であった末期腎不全の発症または心血管イベントによる死亡は、両群に有意な差はみられていない。一方、推算糸球体濾過量に関しては、RTA 402群において、プラセボ群と比べて有意な増加が確認されている。
協和発酵キリンでは、このBEACON試験結果から心不全の発現リスクを確認、今回の国内における第2相臨床試験中止を決定したという。同社では、現在患者の背景情報とともに、BEACON試験で発現した有害事象のリスク因子について詳細解析を行っているといい、解析結果を今後の開発方針に反映していく方針だ。(紫音 裕)
▼外部リンク
協和発酵キリン株式会社 ニュースリリース
http://www.kyowa-kirin.co.jp/news_releases/2013/
「The New England Journal of Medicine」
Bardoxolone Methyl in Type 2 Diabetes and Stage 4 Chronic Kidney Disease
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1306033