東京都インフルエンザ特別研究による成果、「PLOS One」に掲載
東京都医学総合研究所 芝崎太参事研究員らによる、東京都インフルエンザ特別研究としての研究成果が、米科学雑誌「PLOS One」の米国東部時間11月6日付オンライン版に掲載された。高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)を従来方法と比較して50倍以上の高感度で簡易に、また季節性では100倍以上の高感度で検出可能とした蛍光イムノクロマトキットと、その測定機器の開発に成功している。
開発に関しては、東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合のシンセラ・テクノロジーズ社やコニカミノルタ社、アドテック社に加え、北海道大学大学院獣医学研究科、熊本大学感染免疫学などの産官学医連携で進められたという。
(画像はwikiメディアより引用 参考イメージ)
金コロイド使用から蛍光色素を抗体に結合させる方法へ
従来の診断法では、金コロイドを使用する方法が用いられているが、今回の研究成果で見出された方法は、蛍光色素を抗体に結合させた独自の蛍光イムノクロマト法を採用。その蛍光色素を高感度に測定できる小型検出機器も開発し、診断の高感度化に成功した。鼻咽頭拭い液を用いて、従来法と同じ手順、同程度の時間内で測定が可能で、簡易な方法ながら高感度な結果が得られるという。
H5亜型ウイルスには、さまざまな抗原性の変異株が存在し、これまでに開発された抗体では一部のウイルスにしか反応せず、ウイルス株によって検出できないというリスクがあった。しかし今回、熊本大学感染免疫学阪口薫雄教授との共同研究で、開発に成功した抗H5 HA抗体ならば、広範囲の抗原性ウイルスと高親和性で結合。北海道大学大学院獣医学研究科 喜田宏教授との共同研究で実施した多数のH5亜型ウイルスの自然分離株での検定において、すべてのH5亜型インフルエンザウイルスを検出可能であることが明らかになったとしている。
こうした研究成果・開発により、今後発生する可能性があるH5亜型ウイルス感染症すべての診断を、確実に、高感度で早期に行える道がひらかれた。パンデミックの備えとして効果的であり、ワクチンや治療薬の確保、医療体制の準備、早期における患者隔離など、多くの具体的対策の強化を図ることが可能になると考えられている。
さらに発表によると、今回開発された高感度蛍光イムノクロマト法とその測定機器は、H5亜型インフルエンザウイルスのみならず、抗体が利用可能であれば、H7N9インフルエンザウイルス感染症や、がん、生活習慣病など、幅広い疾患の簡易診断への応用も期待できるという。今後の応用発展に期待したい。(紫音 裕)
▼外部リンク
PLOS One : Broad-Spectrum Detection of H5 Subtype Influenza A Viruses with a New Fluorescent Immunochromatography System
http://www.plosone.org/article/
公益財団法人 東京都医学総合研究所 発表資料
http://www.igakuken.or.jp/research/topics/2013/