米科学アカデミー紀要に掲載
発症率の高い精神疾患でありながら、いまだ疾患あるいは障害単位の存在自体も不明であり、多数の発症原因をもつ多数の疾患である可能性が指摘されている統合失調症。その発症に影響を与えるとみられる物質とメカニズムを発見したとする研究が、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)に掲載された。
この研究は、米ジョンズ・ホプキンズ大学の澤明教授や奈良県立医科大学の鳥塚通弘助教、滋賀県立成人病センターの谷垣健二専門研究員らの研究グループによるもので、根本的治療法のない統合失調症の、患者に応じた治療法開発につながると期待されている。
(画像はwikiメディアより引用 参考イメージ)
22q11.2欠失症候群に着目、マウスで研究
研究グループは、染色体異常の22q11欠失症候群(22q11DS)が頻繁に、現在の診断分類における、統合失調症と双極性障害を発症することを指摘。なかでも患者の3割近くが統合失調症を発症するとされる22q11.2欠失症候群(22q11.2DS)に着目した。
この22q11.2DSと同じ症状で行動異常を示すノックアウトマウスを製作し、その中枢神経系を調べたところ、脳の海馬や大脳皮質の細胞分布発達に異常が確認されたという。
また異常の原因が、ニューロンおよび海馬歯状回の発達に不可欠であるシグナリング、たんぱく質「ケモカイン」の一種とケモカイン受容体リガンド12(Cxcr4/Cxcl12;Sdf1)の低下にあることも突き止めている。実際の統合失調症患者18人において、鼻粘膜から採取した嗅覚ニューロンにおけるケモカイン(CXCL12)の発現低下も確認したとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
PNAS : Deficits in microRNA-mediated Cxcr4/Cxcl12 signaling in neurodevelopmental deficits in a 22q11 deletion syndrome mouse model
http://www.pnas.org/content/110/43/17552.full