新ルールでは、劇薬5品目はネット販売を一切認めない方針。田村厚労相は「劇薬に関しては危険性があるので、インターネットでは売れない。本人の挙動等々をしっかり確認する必要があるということなので店頭で対面で販売する」と述べた。
スイッチ直後品目は、市販後の調査期間を原則3年に短縮し、安全性が確認されればネット販売を認める。現行の市販後調査では、約3000症例を集めて安全確認に必要な分析を行っているが、症例の集積と分析にかかる時間を、職員を増やすなどして短くする。
田村厚労相は、「基本、上限は3年だが、専門家の方々がこれをしっかり検証できれば、個別のものによってはそれ以前にネット販売できる品目に移していくということも当然ある」とし、医学・薬学の専門家の検証によって認められた品目については、さらなる短縮を検討する考えも示した。
また、ネット販売の全面解禁を求めていた政府の規制改革会議などによる、「ネット販売規制が経済成長の妨げになる」との主張については、「安全性が確保できないにもかかわらず、ネット販売をするということになると、新たなスイッチOTC薬が出てこなくなる可能性がある」と指摘。
医療用医薬品が一般用として用いられた場合の安全性を検証した上で、「新しいものが出てくることによって一般薬の商品が増えれば、そこでは経済成長に資する部分があるのではないか」とした。
28品目の取り扱いが決まったことを受け、厚労省は新ルールの根拠となる薬事法改正の手続きに入り、今臨時国会に法案を提出する。
■「非常に意義大きい」‐日医・横倉会長が見解
スイッチ直後の23品目について3年間はネット販売を禁止する方向が決まったことを受け、日本医師会の横倉義武会長は8日、記者会見で「市販後間もない第1類について、安全性の監視期間中にネット販売を認めなかったことは、非常に意義が大きい」との見解を表明。今回、一定の方向性が定まったことについて、田村厚労相の決断を評価した。
ただ、不適切な販売や偽造薬の問題など課題は残るとし、「医薬品は性質上、全てを自由に販売したら健康被害が発生する可能性がある。ネット販売に適するものとそうでないものの切り分けが必要」との立場を強調。23品目について、対面販売で十分に説明してもらうことは、国民の健康に望ましいとした。
■「逃げることできない」‐日薬・生出副会長
また、日本薬剤師会の生出泉太郎副会長は、本紙に「全般的には、対面販売が第2類まで通らなかったのは残念だ。23品目がネット販売の対象から外れたのは頑張っていただいた結果であり、その努力を評価したい」とコメントした。
その上で、「現場が対面できちんと相談を受け、アドバイスし、販売することが最も大事。われわれは、対面販売が安全性を担保する上で優れていると考えており、少なくとも衆人監視のもとで営業しており、逃げることはできない」と薬剤師の責任を強調した。
■ネット規制に強く反発‐楽天・三木谷社長
一方、ネット販売の全面解禁を強く求めてきた楽天の三木谷浩史会長兼社長も緊急会見し、「不合理な規制を行う改正薬事法案を国会に提出することは、大変残念で遺憾。“対面安全神話”は時代錯誤も甚だしい」と批判。23品目のネット販売を規制する法案が成立した場合は、国を相手に訴訟を起こして争う姿勢を示し、併せて政府の産業競争力会議の議員を辞任する考えを明らかにした。
三木谷氏は、改正薬事法案の条文に処方箋薬が記載されていることを指摘し、「どさくさに紛れて処方箋薬のネット販売も規制しようとしている」とけん制。「23品目だけなら禁止してもいいという話ではない。社会がITをどう使っていくかを占う非常に重要な案件であり、ここを突破できないと何もできない。古いやり方を是認することこそが許せない」と強く反発。徹底的に争う姿勢を示した。
ケンコーコムの後藤玄利社長は、最高裁判決を受けた第1類と第2類のネット販売再開後、約75万個の一般薬を販売し、電話相談2652件、メール相談2885件を受け、薬剤師から顧客に個別確認の連絡を行った648件中187件で販売を断った取り組みを示し、「これだけ安全性確保に取り組んでいるのに、なぜ23品目はダメなのか。最高裁判決、首相の方針をねじ曲げてまで禁止することが理解できない」と不満を表明し、ネット販売業者を中心に改めて司法の場に訴える考えを示した。