文部科学省と内閣府は23日、新たな研究開発法人制度の骨子案を有識者懇談会に示した。新法人は、大学や企業で取り組みが難しい研究開発を国家戦略として実施する機関と位置づけ、各法人のミッションを明確化。効率化を求める独立行政法人と違い、研究開発の特性を踏まえた法人を設立し、成果の最大化を目指す方向性を打ち出した。
骨子案では、独法化された日本の公的研究開発機関について、効率化を目的とする法体系の中では運用改善が困難とし、不確実性や専門性といった研究開発の特性を踏まえ、成果最大化を目的とする研究開発法人で対応すべきとした。
その上で、研究開発法人を、大学や企業で取り組みが難しい課題を国家戦略として実施する機関と位置づけ、研究開発成果の最大化を目指した制度設計、運用を行うべきとした。目標については定量的ではなく、「癌の撲滅」等の課題解決型とし、成果は国際水準と新規性、革新性を踏まえた専門的評価を行うことが重要とした。
また、急速に変化する世界情勢を踏まえ、主務大臣が臨機応変に必要な指示を行うこととし、国家戦略の徹底を図ると共に、人事制度改革や柔軟な給与設定により、世界の頭脳を日本に集めて海外資源を内部化することも打ち出した。
この日の懇談会では、理化学研究所の野依良治理事長が研究開発法人の制度設計に関して意見を述べた。野依氏は、日本の公的研究機関が独法化されたことに強い問題意識を示し、「効率化を優先する制度で、非定型研究開発には向かない」と指摘した。
その上で、世界で熾烈な研究指導者の引き抜き合戦が行われている現実を示し、「独法制度の修正は本末転倒。国力の源泉たる研究開発機関を作るべく、ゼロベースで法人制度を創設すべき」と提言した。研究開発成果の評価についても、「過去の評価に偏りすぎ」と指摘。科学技術が進歩していく中、「いつ社会的なインパクトをもたらすか読めない」とし、専門家の価値観で判断していくことが必要と訴えた。
独法制度に詳しい新日本有限責任監査法人の岡本義朗委員は、「独法の根幹は目標管理にある。独法か研究開発法人かではなく、本来あるべき研究開発の姿を制度論に落とし込んでいくべき」と述べた。