利根川進センター長らの研究チームによる
独立行政法人理化学研究所は10月17日、脳内ネットワークの過剰な活動が統合失調症の症状に関与していることを発見したと発表した。
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これは、理研脳科学総合研究センター・利根川進センター長とRIKEN-MIT神経回路遺伝学研究センター利根川研究室・Junghyup Suh研究員らの研究チームによる成果で、アメリカの科学雑誌「Neuron」(10月16日号)に掲載される。
情報が正しく処理されていない可能性
研究チームは、統合失調症患者の一部が保有しているカルシニューリン遺伝子の変異を遺伝子工学によって導入し、統合失調症に似た症状を示す遺伝子改変マウスを作製。迷路テストを行っている間の記憶に関わる脳の領域である海馬の神経細胞の活動を調べた。
迷路を走った後の休息中、通常のマウスは直前に走った時と同じ順番で場所細胞が活動するのに対し、統合失調症モデルマウスは海馬の場所細胞の活動が順番通りに再現されなかったという。代わりに過剰に高いレベルでほとんど同時に場所細胞が活動し、海馬での情報が脳のネットワーク内で正しく処理されていない可能性が示されたとしている。
統合失調症は、様々な情報を脳が統合できなくなることで引き起こされる精神疾患。発病原因は多数あるとされているが、根本的な原因解明はされていない。今回の結果から、幻覚や妄想、思考の混乱など統合失調症の症状が、記憶に関わる脳内ネットワークの機能異常と関連していることが示されたことで、統合失調症の創薬や新しい治療法の開発が期待されるという。(小林 周)
▼外部リンク
独立行政法人理化学研究所 ニュースリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20131017_1/