シンポジウムでは、混合診療をめぐって意見が相次いだ。新川主計官は、「保険診療の単価の引き上げプレッシャーが働く結果として、税と保険料等でまかなう保険診療の部分の負担増につながる。もう一つは、治療効果が定かでない医療への公費投入が助長されるのではないかという2点に懸念がある」と述べ、全面解禁に反対する立場を示した。
一方で、政府の日本再興戦略で「医療」が成長産業と位置づけられ、市場拡大の取り組みが進められている動きに言及。「医療産業の成長を全て公的医療保険だけで担保するのは難しい。成長を求めるのであれば、海外に展開したり、保険外併用療養制度をうまく活用することを考えないと無理がある」との認識を示した。
■「制度論的には卒業」内閣官房・中村室長
中村室長は、混合診療の解禁をめぐって、様々な問題が一つにまとめられ、提起されていることに違和感を表明。「ドラッグラグやデバイスラグの問題など、それぞれの改善を保険外併用療養制度の中で整理するという形で、いわば管理された混合診療を認める体制が確立していることから、制度論的には卒業したのではないか」との考えを示した。
ただ、保険外併用療養制度の運用の仕方によって、混合診療の考え方は大きく変わってくると指摘。その部分については、中央社会保険医療協議会等の機関で議論していくことが重要だとした。
日本医師会の今村聡副会長は、保険外併用療養制度の活用は重要としつつ、日本の医療保険制度の大原則である「現物支給」の原則を堅持することが前提と強調。一定限度以上の費用負担を困難にし、現物給付から「費用給付」に転換しかねない危険があることに懸念を示した。
学習院大学経済学部の遠藤久夫教授は、「評価療養は、基本的に保険収載を前提としてアクセスを早くしたり、開発を促進させるという位置づけになっているので、基本的に保険外併用療養制度については、運用上の問題はあるにせよ、あまり反対する人がいない」としつつ、「保険収載を前提としない評価療養に一歩踏み出すかどうかについては、慎重な議論が必要」との考えを示した。