ALK阻害剤アレクチニブ塩酸塩
中外製薬株式会社は、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic Lymphoma Kinase:ALK)融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんを対象としたALK阻害剤アレクチニブ塩酸塩について、10月7日製造販売承認を申請したと発表した。なお同剤は、9月13日に「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を予定効能・効果として、厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けている。
(画像はwikiメディアより引用)
ALK融合遺伝子陽性に効果、個別化医療に対応
アレクチニブ塩酸塩は、中外製薬鎌倉研究所で創製された経口ALK阻害剤。バイオマーカーや診断ツールで適切な薬剤を選択する個別化医療に合わせた薬剤である。ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がん患者の2%~5%に発現すると報告されており、この融合遺伝子を有する細胞は恒常的にALKのキナーゼ活性が上昇し、細胞が腫瘍化すると考えられている。同剤は、このキナーゼ活性を選択的に阻害して腫瘍細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を発揮する。海外では導出先のF. ホフマン・ラ・ロシュ社が臨床試験を行っている。
93.5%が腫瘍縮小
今回の承認は、国内13の医療機関で行われた第1/2相臨床試験における成績に基づき、第3相試験成績が得られる前に申請する運びとなったという。化学療法による治療歴を有するALK融合遺伝子陽性肺がん患者を対象とした同試験において、第1相パートでは推奨容量を1回300mg、1日2回投与と決定、同用量での第2相パートでは46例中43例(93.5%)に腫瘍縮小効果が認められた。安全性については、有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード4以上の重篤な副作用は認められず、グレード3以上の主な副作用は好中球減少および血中クレアチンフォスフォキナーゼ(CPK)増加であり、頻度は46例中2例(4.3%)であった。
画期的治療薬にも指定
この臨床試験に加え、米国で実施したクリゾチニブ不応となったALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者における第1相臨床試験(用量漸増試験)の成績に基づいて、2013年6月26日には米食品医薬局(FDA)からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)に指定されている。これは、アレクチニブ塩酸塩が、既存の治療法を上回る改善が期待されることを示しており、中外製薬は、患者や医療従事者に新たな治療選択肢を提供するため、承認取得に向けて取り組んでいくとしている。(長澤 直)
▼外部リンク
中外製薬株式会社 プレスリリース
http://www.chugai-pharm.co.jp/