■15年度の開設見込む
東北薬科大学は11日、医学部新設を目指す構想を発表した。薬学の単科大学としては初の試み。東日本大震災の影響で深刻化した医師不足の解消に向け、地域医療・災害医療に貢献する医師の養成を目指す。また、薬学教育・研究の機能を生かし、医薬品・薬学の専門知識と実践能力を併せ持った医師の養成にも取り組む。会見で同大学の高柳元明学長は、「医師は診断して医薬品を処方して終わってしまう。薬の相互作用や薬物代謝など、薬物動態学の知識を持った医師の養成が必要と考えた」と語った。早ければ2015年度の開設を見込むが、今後、文部科学省などの関係省庁も交え、新設に向けた検討が進むことになる。
医学部の定員は100人程度。このうち、地域に医師を誘導するための措置として、東北全体で10人程度の「地域特別枠」を設ける。特別枠入学者は、卒後在学年数の1・5倍に相当する期間、大学の指定する東北地区の病院に勤務する義務を負う。
現行の文部科学省の定める大学設置基準に基づくと、147人の専任教員が必要になると見込む。入学当初までは、既存のキャンパスを活用するが、学年進行に伴い、医学部専用のキャンパスを新設する。臨床実習は、附属病院や連携病院を活用する。附属病院については、全面的な建て替えを実施する予定。
同大学では、新設に必要とされる費用を「229億円プラスα」と試算する。「必要額は、保有する金融資産の範囲内で、対応は十分可能」という。
医学部の新設をめぐっては、医師が供給過剰になるなどの予測を踏まえ、1979年の琉球大学を最後に過去34年間新設が認められていない。文科省が03年に出した告示では、医学部を新設しない方針が示されている。
ただ、政府の産業競争力会議が、国家戦略特区を利用して医学部新設を認めることを検討し始めるなど、風向きが変わりつつある。高柳氏も「安倍晋三首相は下村博文文部科学相に対し、東北地方に医学部新設を検討するよう指示したと聞いている」とし、期待を寄せた。
安倍首相の指示を受けた下村文科相は8日の閣議後の会見で、東北地方に設置する医学部は1カ所とすることや、設置主体や場所、附属病院の体制など関係自治体が一つにまとまることなどの条件を示したが、宮城県内では、既に仙台厚生病院が東北福祉大学との連携を視野に医学部新設に向けて動き出しており、二つのグループが名乗りを上げることになった。
高柳氏は、「2万人の卒業生を輩出し、宮城県をはじめ、東北地方の薬剤師の半分以上が本学の出身者ではないかと言われるほど。それは医療関係者にも認めてもらっていると思っている」と、これまでの薬学教育・薬剤師養成の実績を強調。
その上で、「行政の判断になるが、多分、認められるだろうという確信は持っている」と述べた。