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京都大学 時差ボケしないマウスを開発

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2013年10月15日 PM05:19

時差ボケのしくみを解明

京都大学薬学研究科 岡村均教授らは、時差ボケが起こるまったく新しい仕組みを解明、時差ボケしないノックアウトマウスの開発に成功したと、10月4日発表した。研究成果は米国科学誌「Science」に掲載されている。

(画像はプレスリリースより)

進化の中で作り上げた体内時計

時差ボケのもとになる体内時計は、地球上の生命体が何億年もかけて確立した24時間のリズムを刻む概日時計システム。とくに夜行性ほ乳類で高度に発達している。昼行性であるヒトも祖先は夜行性のほ乳類であり、強力な体内時計を持っている。このため、海外旅行中に現地時間になじめず、時差ボケが起こる。しかし、この時差のメカニズムはこれまで解明されていなかった。

受容体ダブルノックアウトで時差消失

研究グループは、強力な時間を作り出す脳の視交叉上核の時間生物学研究から、時差を起こすメカニズムを解明した。視交叉上核の約半数の細胞は、アルギニンバゾプレッシン(AVP)を発現、同時にAVP受容体であるV1aおよびV1b受容体も発現し、細胞間で視交叉上核内の局所神経ネットワークを形成しているが、これがどんな働きを持つのかこれまでわかっていなかった。研究チームはV1a、V1bの両受容体を欠損したダブルノックアウトマウスを作製、このマウス(時差消失マウス)が、明暗環境を変化させたとき、行動リズムの時差を完全に消失することを発見したという。

マウスの飼育環境を8時間早めて時差を起こすと、正常マウスは新しい明暗環境に順応するまでに約10日かかるが、時差消失マウスでは瞬時に順応。また、視交叉上核で時計遺伝子の発現により概日リズムが作られるが、時差を起こした後も時差消失マウスは3日後にこの時計遺伝子発現リズムを回復、8日かかった正常マウスと大きな差があった。肝臓や腎臓などの末梢臓器における時計遺伝子の発現リズムや体温のリズムも、正常マウスよりも時差消失マウスは早く回復したという。

視交叉上核の神経回路がカギ

研究チームでは、視交叉上核の神経ネットワークが安定した概日時計システムを維持していると考えており、この神経回路によって外界の明暗環境に作用されずに体内時計を正確に刻めているとしている。特に目から入る光が昼夜の誤認要因であるが、生存競争に勝ち抜くにはこうした外的要因に左右されないシステムが有効であった。

研究チームでは、時差消失マウスの結果から、V1a・V1b受容体の機能を一時的にブロックする拮抗薬を、正常マウスの視交叉上核へ直接投与し、時差を顕著に軽減できたという。このことから、今後ヒトの時差ボケにも視交叉上核の神経伝達をターゲットとした新しい創薬で、時差ボケを軽減できるのではないかとしている。

進化の中で獲得した体内時計が、飛行機などによって短時間で昼夜逆転する現代社会では逆に仇となっている。また、時差で働くシフトワーカーが増加傾向にあり、時差ボケによる生活習慣病の増加など、健康への影響が懸念されている。今後の時差ボケメカニズムの詳細な解明と、新たな睡眠障害などに対する治療薬の開発が期待される。(長澤 直)

▼外部リンク

京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/

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