新たに再発防止委員会を設置
スイス・ノバルティス ファーマのデビッド・エプスタイン社長は3日、都内で会見し、臨床研究に関するデータ操作に関連した新たな再発防止策を発表した。
同社の高血圧治療薬・ディオバンでは国内で5つの大規模臨床研究のデータ操作が指摘され、これに関連した厚生労働省の「高血圧治療薬の臨床研究に関する検討委員会」が9月30日に発表した中間報告書では、一連の事件を「ノバルティス社として関与していたと判断すべき」と断じている。今回の会見はこの報告に応じて開催されたもので、エプスタイン社長は、「患者様とそのご家族、医療関係者の皆様をはじめ、多くの方々に多大なご心配とご迷惑をおかけしたと同時に臨床研究の信頼性を著しく損ない、日本社会の不利益につながる事態を引き起こしたことを心よりお詫びする」と謝罪を表明。社内措置として(1)再発防止委員会の設置(2)本社チーフコマーシャルオフィサーのエリック・コルヌート氏のノバルティスファーマ会長就任による経営陣刷新、(3)日本法人のノバルティスホールディングスジャパン・石川裕子社長とノバルティスファーマ・二之宮義泰社長の30%減俸の追加対策を講じたことを明らかにした。
会見でエプスタイン社長は、今回の事件を受け、社内コンプライアンス体制と企業倫理の向上に全力で取り組む姿勢を繰り返し表明。単なる遵法にとどまらず、「ベスト・イン・クラス」の社内規範を整備し、信頼回復にとどまらず、それから一歩踏み込んだ模範的企業姿勢の獲得に努めるとの認識を示した。
再発防止委員会に関しては、7~9名からなり、半数は外部の医療・医学、法務、倫理の専門家などで構成する意向であることを明らかにした。同委員会は日本法人トップへの直接提言を行え、その内容を確実に社内体制に反映させていく意向。また、これと同時にヨーロッパ20か国以上での法規制対応の経験を持つコルヌート氏の日本法人会長就任など、ノバルティスのグローバルレベルでのトップクラスの人材を日本法人に結集させることで、再発防止委員会との両輪で一層の社内体制の向上を目指す考え。
また、石川、二之宮両社長の減俸処分については「この事案の帰趨が定まるまで継続する」とした。
誇大広告については明言を避ける
一方、データ操作については「医師主導臨床研究であり、データは研究者が保有していて当社はアクセスできないことから、データ操作の有無や誰が操作したのかについて確認することができなかった」と述べ、同社第三者委員会による調査でも社としての関与の証拠は見つかっていないという従来の主張を展開。その一方でデータが入手できれば積極的に再検証を行う用意があることを表明するとともに、厚生労働省の調査には全面的に協力する意向を強調した。
また、こうしたデータ操作が発覚した臨床研究をプロモーションに積極的に活用していたことに関連して、薬事法第66条の誇大広告にあたる可能性が指摘されているが、その点に関してエプスタイン社長は「この点に関して今の時点で私が見解を述べるのは時期尚早。現在調査を行っている方々がおり、その回答や提言を待ちたい」と述べるにとどまった。(村上和巳)