客観的に診断する指標がない
東京大学大学院医学系研究科精神医学分野 山末英典准教授らの研究グループは、自閉症スペクトラム障害の客観的な評価方法を開発するために血液中の代謝産物を解析した結果、4つの代謝産物濃度がマーカーとして役立つ可能性を明らかにしたと発表した。
(画像はwikiメディアより引用)
自閉症スペクトラム障害は主に本人との面談、行動観察、養育者からの聞き取りで診断を行い、その正確さは診断する専門家の主観に影響される。客観的な指標による生物学的検査は行われていないのが現状だ。近年は、100種類以上の代謝産物を測定するメタボローム解析で尿中を解析する研究が報告されているが、血液中の代謝産物を測定した報告はなかった。今回、メタボローム解析でこれを網羅的に測定して、客観的指標を開発する可能性を探ったという。
1回目は自閉症スペクトラム障害群10名と健常対照群10名、2回目は自閉症スペクトラム障害群15名と健常対照群18名の血中濃度を比較し、100種類以上の代謝産物を測定した。その結果、アルギニンとタウリンの上昇、5-オキソプロリンと乳酸の低下が1、2回目ともに認められた。これら4つの代謝産物の血液中濃度を利用したところ、自閉症スペクトラム障害と健常対照を高い確率(1回目80.0%,2回目78.8%)で判別できたという。
またアルギニン上昇の程度は、精神科医が対人交流や職場の問題の程度に基づいて評定する生活機能の全体的評定の低下と関連していたとしている。
自閉症スペクトラム障害との関係は不明
4つの代謝産物の血中濃度から、自閉症スペクトラム障害の客観的な診断ができる可能性を示す知見を得たが、代謝産物の異常が自閉症スペクトラム障害の原因なのか、自閉症スペクトラム障害に起因するのかは不明のままである。
よって、将来の診断・治療技術の確立に向けて、これからも病態と代謝産物の機能的な関連の検討を必要とする。また、再現研究には50人から150人程度の研究参加者が必要だと試算しているとのことだ。(馬野鈴草)
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東京大学 プレスリリース
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