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放医研 認知症の神経細胞死を引き起こすタウ タンパク質の生体での可視化に世界初成功

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2013年09月30日 PM08:30

タウ タンパク質病変を画像化するPET薬剤開発で

独立行政法人 放射線医学総合研究所と独立行政法人 科学技術振興機構は9月19日、認知症の神経細胞死に直結する異常タンパク質、タウタンパク質(以下「タウ」)の蓄積を、生体において可視化することに世界で初めて成功したと発表した。

アルツハイマー病およびアルツハイマー病以外の認知症におけるタウ病変の生体画像を、新たに開発した薬剤であるPBB3(PBB:Pyridinyl-Butadienyl-Benzothiazole)を用い、ポジトロン断層撮影(以下「PET」)で画像としてとらえている。

これまでタウの集積は、死後に脳を解剖しなければ分からなかったため、生体における画像化は、発症前の早期発見等につながる可能性があるとしている。

(画像はプレスリリースより)

重症化するにつれて集積領域が拡大

アルツハイマー病患者の脳内には、アミロイドベータとタウが蓄積し、これに伴って神経細胞が死んで脱落、脳が萎縮して症状が発現する。PIBを用いたPETで、アミロイドベータを画像化する技術はこれまでにも存在したが、タウではなかったほか、最近の研究で、神経細胞死に密接な関わりがあるのは、神経の外に蓄積するアミロイドベータではなく、神経のなかに蓄積するタウであると考えられていることから、今回の研究におけるタウ病変を画像化できたことが、より適切なアルツハイマーの病勢評価や根本的治療法の開発につながると考えられている。

タウ病変を画像化するためのPET薬剤開発は、世界中の多くの研究グループが取り組んできたが、有望な薬剤が得られてこなかった。放射線医学総合研究所研究チームでは、タウ凝集体の分子構造に至適な分子長があることを見出し、新たな化合物群を作成。この化合物群がタウを過剰発現させた認知症モデルマウスなどでタウ病変に結合することを確認した。

その後、化合物群のなかでタウ病変に選択的に結合する薬剤3種類を選びだし、放射線同位元素である11Cで標識し、モデルマウスに投与してPET撮影を行ったところ、PBB3の標識体がもっとも高いコントラストで、タウ病変を検出できることを突き止めた。

これら基礎研究でPBB3の有用性が確かめられたことを受け、研究倫理審査委員会の承認を得て、アルツハイマー病患者と認知機能が正常な高齢者を対象とした臨床研究を実施。その結果、これまでの多くのグループによる死後脳の研究に符合する、海馬におけるタウ病変の蓄積をアルツハイマー病患者脳の画像において確認することができたとしている。

さらに、PBB3の集積部位は、アルツハイマー病を発症して重症化するに従い、大脳辺縁系全体、さらに大脳皮質の広い領域へと拡大することが分かり、脳を解剖して調べることで推測されていたタウ病変部位拡大の推移ときわめてよく一致した所見が得られたという。

(画像はプレスリリースより)

またPBB3は、アルツハイマー病以外の認知症で蓄積するタウ病変にも結合することが基礎研究で示唆されていたが、実際に非アルツハイマー型認知症の患者でもタウ蓄積を画像で可視化することに成功している。

大きな研究成果、治療薬開発、抗タウ療法の実現に期待

今回開発され、有用性が確認されたPET薬剤PBB3は、さまざまな認知症で形成されるタウ病変を描出し、神経細胞の脱落を細かく検出する手段として認知症診断に広く応用できるとみられる。また、その発生から拡大を可視化しており、どんな症状がどのような神経回路異常から起こってくるのか、さらにどういった条件で症状の進展が止められるのかといった研究に、重要な手がかりを与えてくれるとも期待されている。

タウ病変は神経細胞死を反映しているため、その治療薬が開発されれば、認知症の症状が明確になった段階でも、それ以上の神経細胞死を防ぐことによって、症状の重症化を防ぎ、介護負担を大幅に軽くすることができる可能性もある。認知症治療の決定的切り札と目されてきた、抗タウ療法の実現に向け、大きな一歩を踏み出した研究成果といえるだろう。

この研究は、文部科学省の委託事業である「分子イメージング研究戦略促進プログラム」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)等の支援を受けて実施されたもので、米科学誌「Neuron」オンライン版に掲載された。(紫音 裕)

▼外部リンク

独立行政法人放射線医学総合研究所 プレスリリース
http://www.nirs.go.jp/information/press/

Neuron 該当研究発表文
http://www.sciencedirect.com/science/article/

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