急性骨髄性白血病患者の治療薬
ドイツのBoehringer Ingerheim GmbH(ベーリンガーインゲルハイム)が9月17日に発表したところによると、同社が急性骨髄性白血病(AML)患者の治療薬として開発を進めている「Volasertib」が、米国食品医薬品局(FDA)により“画期的治療薬(Breakthrough Therapy)”に指定されたという。
FDAによる画期的治療薬指定制度は、2012年に開始されたもので、重篤または致命的な疾患や症状の治療を意図して開発がすすめられている薬剤で、とくに臨床的に重要な評価項目で既存の治療薬を上回る改善が、予備的臨床エビデンスで示されたものに対し、指定認定が行われている。
(ToNToNi 画像はwikiメディアより引用 参考イメージ)
とくに高齢患者への新しい治療選択肢として期待
Volasertibは、ベーリンガーインゲルハイムが開発し、現在治験段階にある、強力かつ選択的ポロ様キナーゼ(Plk)阻害薬。既知の5種類あるヒトPlkのうち、もっともよく解明が進んでいる細胞分裂(有糸分裂)を制御する酵素であるPlk1の活性を阻害する設計の化合物で、Plk1を阻害すると、細胞周期が停止し、細胞は最終的にアポトーシスに至る。日本での開発段階は第3相にある。
第2相試験では、強力な寛解導入療法が適用できない未治療AML患者を対象とし、既存の治療法である低用量シタラビンとVolasertibの併用療法と、低用量シタラビンの単独療法を比較。主要評価項目の客観的奏功率で、併用療法群が31%(42人中13人)、単独療法群で13.3%(45人中6人)という結果になっている(p=0.0523)。
副次的評価項目の無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性でも有望な結果が得られ、これらを受けて第3相試験POLO-AML-2が開始されている。この試験では、65歳以上で強力な寛解導入療法が適用できない、未治療のAML患者を対象に、Volasertibと低用量シタラビンの併用療法を検討するとしている。
AMLにおけるもっとも一般的な治療法は、強力な化学療法による寛解導入療法だが、高齢患者の多くでは、こうした治療法の忍容性は低く、適用とならないため、とくに新しい治療法が必要とされている。ベーリンガーインゲルハイムでは、Volasertibがそうした患者らにおける生存関連のアウトカムを改善する、忍容可能な新治療選択肢となることを期待するとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
ベーリンガーインゲルハイム プレスリリース
http://www.boehringer-ingelheim.com/news/