アルデヒド分解酵素ALDH2の働き
京都大学 放射線生物研究センター 高田穣教授らは、東海大学、九州大学との共同研究で、小児血液系難病ファンコニ貧血がアルデヒド分解酵素遺伝子を欠損すると重症化することを発見したと発表した。
(画像はプレスリリースより)
遺伝性疾患のファンコニ貧血(FA)は、再生不良性貧血、白血病、がん、奇形などの症状を伴う小児の難病。血液の幹細胞にDNA損傷が蓄積して、貧血(骨髄不全)と白血病を発症する。家族性乳がん・卵巣がんと共通の遺伝子異常もあるが、どのようなDNA損傷が問題なのかは解明されていなかった。
アルデヒド分解酵素ALDH2は、日本人の半数に遺伝的に欠損し活性がない。欠損する人は、飲酒後にアルデヒドが分解されず、動悸などの悪酔い症状が出現する。アルデヒドは飲酒に関係なく食べ物や体内の代謝に起因して発生し、ALDH2がそれを分解している。
ALDH2の欠損でFAは重症化
今回、FA患者64名のアルデヒド分解酵素ALDH2の遺伝子型を調査した結果、アルデヒド分解ができないタイプ(AA型、GA型)は分解できるタイプ(GG型)より貧血(骨髄不全)発症が早く、特にAA型患者では出生直後に貧血と白血病の前段階を発症し重症だったという。
骨髄で血液をつくる幹細胞では、アルデヒドを適切に分解し(浄化)、傷ついたゲノムを修復することが健康維持に重要だが、FA患者ではゲノム障害が修復されず貧血が進行すると考えられる。AA型では、幹細胞により大量のアルデヒドが存在し、早期の貧血、白血病化が発症する。ファンコニ貧血の病態は、体内で自然に生成したアルデヒドによるゲノム損傷の修復不全であることが強く示唆された。
アルデヒドに関与する疾患にも
今回の知見で、ファンコニ貧血にALDH2の活性刺激薬剤が有効と考えられ、実際にこのような薬剤の開発が報告されている。さらに、骨髄幹細胞が減少する疾患をはじめ血液疾患全般にアルデヒドが関与している可能性があるため、これらの治療法の開発や、家族性乳がんの発症、骨髄幹細胞維持のメカニズムの解明が期待されるとしている。(馬野鈴草)
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京都大学 プレスリリース
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