皮膚のバリア機能を強化
国立大学法人京都大学は、同大学医学研究科の椛島健治准教授らが、皮膚のバリア機能を高めてアトピー性皮膚炎を改善させる化合物を発見したと、9月17日発表した。
(画像はwikiメディアより引用)
研究成果は、米国科学誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。
皮膚バリアのカギとなる“フィラグリン”に着目
アトピー性皮膚炎は、表皮とくに角質層の異常によって皮膚の乾燥とバリア機能の低下が起こり、様々な刺激やアレルギー物質への炎症反応とかゆみが誘引される。このとき、異物への免疫応答が過剰になり、症状が悪化すると言われている。
研究では、ここに着目し、皮膚のバリア機能を保持する上で重要なタンパク質の一つフィラグリンの発現を促進する化合物を発見したという。タンパク質フィラグリンは、プロフィラグリンとして表皮で産生、分解することでフィラグリンモノマーとなり、皮膚のバリア機能を担う。またフィラグリンはさらに分解され、天然保湿因子として働く。
アトピー性皮膚炎の患者では、このフィラグリン遺伝子の異常が約20%から30%にみられ、ほとんどの患者でフィラグリンが低下している。そのため、フィラグリンのコントロールによるアトピー性皮膚炎の改善について、全世界で研究されている。
モデルマウスで皮膚炎が改善
研究グループではまず、培養した表皮細胞を用い、市販の化合物ライブライリーをスクリーニングし、JTC801という化合物が、培養表皮細胞のプロフィラグリン産生を促進していることを見出した。次に、ヒトの皮膚に近い構造を持つ三次元表皮培養にこの物質を加えたところ、フィラグリン産生の亢進とフィラグリンモノマーの増加を確認したという。さらに、動物実験でも、アトピー性皮膚炎モデルマウスにJTC801を内服させ、皮膚炎様症状が改善させることができたとしている。
アトピー性皮膚炎を抜本的に改善する治療薬は、世界中で必要とされている。今回の成果は、世界で初めてフィラグリンの発現亢進によってアトピー性皮膚炎を改善させることを示したものだ。このシード化合物によるフィラグリンを標的とした新規治療法や内服薬の開発が、近い将来実現することが期待される。(長澤 直)
▼外部リンク
京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/