申請の「群馬がん治療技術地域活性化総合特区」が認定に
政府が9月13日、地域を限定し、規制の緩和や税財政上の特例措置を認める総合特区に関し、群馬県が今年4月に申請していた「群馬がん治療技術地域活性化総合特区」の指定を認定した。世界最先端の重粒子線治療を中心とした、がん医療の研究開発や人材育成に取り組んでいくことを柱としている。
群馬県では、より手厚い優遇措置を受けることのできる「国際戦略総合特区」での申請を昨年行っていたが、問題点が指摘され、指定は見送られていた。今回の申請においても、国際戦略特区を併願したが、こちらは採択されず、地域活性化総合特区での認定となった。
国の総合特別区域評価・調査検討会は、今回の指定対象決定について、重粒子線がん治療技術を活用した先進的な取り組みを評価。がんを含むヘルスケアは成長が見込まれる分野であり、地域活性化にも有効との見解を示した。医療観光への期待や、大学を中心とした人材集積も評価している。今後については、地元企業の集積・連携に関わる具体的な対応策をさらに検討するよう求めている。
(この画像はイメージです)
医療産業を集積し、活性化図る
重粒子線治療は、難治がん治療の切り札とも目され、従来の放射線治療に比べても腫瘍の殺傷能力が高く、これまで治療困難であった骨肉腫などの難治性がん、放射線に抵抗性のある腺がんなどできわめて有効と考えられている。また、副作用も少なく、短期間での治療が可能というメリットもある。
群馬大学では、とくにこの重粒子線がん治療研究が進んでおり、大学病院に「群馬大学重粒子線医学研究センター」を設置。国内唯一のスタイルで、がんの集学的治療がワンストップで行える環境を整えてきている。これまでの実績を活かし、独自の普及型重粒子線治療装置を全国はもちろん、世界へ展開することや、国際的な重粒子線治療にかかる医療人材育成拠点となることを目指しているという。
県内には、日本唯一の原子力に関する総合的研究機関である、高崎量子応用研究所もあり、放射線医学総合研究所や宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携のもと、重粒子線治療システムのさらなる高度化実現にも期待がかかる。
地元企業である、前橋市の金属部品メーカー、蔵前産業は、こうした群馬大学と協力し、重粒子線治療器の主要部品であるフィルターの開発を行っている。今後より精度を高め、治療の適用範囲の拡大を目指す方針だという。
また、協和発酵キリンは、高崎市内に生産拠点を持っており、同社の強みである抗体医薬品と重粒子線とを組み合わせたがんの治療法を提案。より低コストな抗体医薬品の開発も進めている。
群馬県では、このほかにも異業種からの医療分野への参入も推奨するなど、県全体で医療産業の集積を目指す構想だ。申請には14のプロジェクトが提案されており、すでに県内企業などで3プロジェクトが先行着手されている。(紫音 裕)
▼外部リンク
群馬県 指定に関する知事コメント
http://www.pref.gunma.jp/chiji/o6000001.html
群馬大学 重粒子線医学研究センター
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/
内閣府 地域活性化総合情報サイト
http://www.chiiki-info.go.jp/
首相官邸 総合特別区域基本方針 資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/sogotoc/