高まる咀嚼能力への認識
科学技術振興機構(JST)は、大阪大学の研究成果をもとにユーハ味覚糖株式会社に委託した「咀嚼能力評価システム」の開発に成功したと発表した。
(画像はプレスリリースより)
咀嚼には栄養の確保、噛み応えの認知、唾液分泌の促進、嚥下機能の円滑化などの役割がある。児童の食育、成人の肥満と咀嚼との関係、高齢者の咀嚼・嚥下障害への対応など全ての年齢層で咀嚼への取り組みが求められ、咀嚼能力評価の重要性は高まっている。
現在、咀嚼能力の測定・評価方法には、ピーナッツ・コメの粉砕粒子の分布状態の測定、グミゼリー・ガムの溶出量の測定、ワックスキューブ・ガムの混合状態、食塊形成を測定する方法などがある。しかし、ピーナッツなど被験試料が規格化されていない点、測定プロセスの再現が難しい点などにより、定量的な測定・評価は困難だった。
正確で簡便な評価が可能に
今回開発した咀嚼能力測定専用グミゼリーは、形状・成分などを規格化しており、測定精度や再現性が高いという。また、咀嚼能力測定装置は、全自動化した測定プロセスで人為的な測定誤差の可能性を少なくしたとしている。
測定には、グミゼリー1個を30回咀嚼後に咬断片を回収し、咀嚼能力測定装置にセットする。自動的に洗浄水の注入、攪拌、唾液の除去を行い、咬断片の表面積から溶出したβカロチン色素で表面積増加量を出す。結果は30秒で算出されるという。
通常はこのように色素抽出と濃度の測定が必要だが、このグミゼリーの設計は測定器のない現場でも評価が可能。咬断片の粉砕状況を10段階でスコア化した視覚資料と照合し、咀嚼能力を推定するという。
今回の評価システムは、歯科治療の支援や高齢者の食事の選択、健康状態を把握するツールとして期待が高い。これまで大阪大学から咀嚼に関連する研究機関に試作品を頒布してきたが、今後は一般向けの市販を行うとしている。さらに、嚥下食の選定指標となるグミゼリーの開発や、咀嚼能力向上のトレーニング用のグミゼリーの研究などを進めるということだ。(馬野鈴草)
▼外部リンク
科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/