■緩和医療薬学会が調査
日本緩和医療薬学会の健康保険・介護保険対策委員会が行った実態調査によると、保険薬局の医療用麻薬の不動在庫金額が1年間で約2700万円に上っていた。廃棄金額は3年間で約724万円に及んでおり、これを麻薬小売業者の免許を取得している全国の保険薬局に当てはめて試算すると、不動在庫金額は1年間で推計約75億円、廃棄金額は3年間で推計約20億円に上る。同委員会は、薬局間の麻薬譲渡、譲受における規制緩和を要望している。
調査は、緩和医療に関わる全国の薬局、医療機関等の医療提供施設に勤務する薬剤師421人から回答を得たもの。
まず保険薬局関連では、過去1年間に無菌製剤処理加算を算定したことがある施設は16%。無菌室や無菌施設での調製は、麻薬が中心静脈栄養法用輸液に次いで多く、74%の薬局が麻薬の調製に30~59分の時間を費やし、半年間で53%の薬局が麻薬の調製を10件以上行っていた。
無菌室などの初期設備投資は、400万円以上を費やした薬局が64%に達した。注射薬調製に関する持ち出し金額を見ると、月に1万円以上費やしている薬局が58%に上り、これら業務が薬局の負担となっていることがうかがえた。
過去1年間で在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定したことがある薬局は53%と、全国平均の推定7・5%に比べ実績が高かった。患者1人の指導に費やす時間は30~60分未満が37%、患者宅までの移動から指導、報告書作成までのトータル時間を60分以上費やしている薬局は81%あり、日常業務の中でかなりの時間が1人の在宅患者のために費やされていることがうかがえた。
さらに、医療用麻薬の不動在庫金額を調べたところ、2011年10月1日から昨年9月30日までの1年間で、調査対象となった薬局124施設で2699万3648円、病院109施設で1819万9185円、合計金額で4519万2833円に上ることが明らかになった。また、廃棄した麻薬の金額を集計したところ、09年10月1日から昨年9月30日までの3年間で、薬局124施設で廃棄金額は721万5341円、病院109施設では1357万1101円、合計2078万6442円に上ることが分かった。
この金額を、全国の保険薬局5万5000軒のうち麻薬小売業者の免許を取得している施設に当てはめて試算してみると、不動在庫金額は1年間で推計約75億円、廃棄金額は推計約20億円に上ることが明らかになった。
廃棄数量が最も多かったのは、保険薬局、病院共に「MSコンチン錠」であり、「オキシコンチン錠」や「カディアンカプセル」などの普及により、「MSコンチン錠」や「デュロテップMTパッチ」が不動在庫となりやすくなっていることが分かった。「オキシコンチン錠」も高用量規格になると、不動在庫になる傾向がうかがえた。
これらから、保険薬局、医療機関共に「MSコンチン錠」と「デュロテップMTパッチ」の廃棄金額が大きく、全体の半数以上を占めることが明らかになった。
同委員会は「新規薬剤への移行は、特に保険薬局で麻薬管理を困難にしている」と指摘。薬局間の麻薬譲渡、譲受における規制緩和を要望した。メーカーに対しては、麻薬の後発品が発売されていることを踏まえ、高用量規格製品の小包装化を求めた。
■精神科医不足、明らかに‐55%がケア加算取らず
一方、病院薬局関連では、緩和ケアチームがありながら、緩和ケア診療加算を算定していない施設が55%と半数以上に上ることが分かった。その理由としては、加算条件である常勤の精神科医がいないとの回答が最も多かった。
常勤の精神科医がいない施設で、非常勤の精神科医がいる施設も36%にとどまった。しかも、精神科医の勤務時間が週に10時間未満の施設が67%もあり、短い時間しか勤務していないことが分かった。約半数の施設では、緩和ケア診療加算を算定せず、非常勤の精神科医の協力を得ていたが、勤務時間は少なく精神科医の確保が難しい実態が明らかになった。
同委員会は、現状に見合った診療報酬上の評価を求めている。