乳がん治療用抗HER2ヒト化モノクローナル抗体製剤
中外製薬株式会社は、「HER2陽性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とした抗HER2ヒト化モノクローナル抗体製剤「パージェタ(R)点滴静注420mg/14mL」(一般名:ぺルツズマブ(遺伝子組換え))を発売した、と9月12日発表した。
(画像はプレスリリースより)
がん増殖シグナルを阻害
HER2は、一部の乳がん患者でがん細胞表面に過剰発現しているタンパク質で、がんの増殖シグナルを細胞内に送っている。「パージェタ」は、HER2を標的としたヒト化モノクローナル抗体。
すでにいち早く個別化医療に取り組んでいるF. ホフマン・ラ・ロシュ社の抗HER2抗体の乳がん治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)とは異なるHER2レセプターを標的とし、その作用を補完すると考えられている。
HER2はHER3などと二量体をつくって増殖シグナルを送るが、「パージェタ」がHER2に結合すると、HER3などとの二量体が形成できなくなり、がんの増殖を抑制するとしている。
ADCC活性でがん細胞が死滅
さらに、「パージェタ」やトラスツズマブがHER2と結合すると、免疫細胞(マクロファージやNK細胞)を呼び寄せ、抗体依存性細胞傷害(antibody dependent cellular cytotoxicity:ADCC)活性によってがん細胞を死滅させるという。
「パージェタ」は点滴静注製剤で、通常成人で1日1回、3週間間隔で、ぺルツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時に840mg、2回目以降は420mgを1時間かけて点滴静注する。
国内の乳がん患者は年々増加しており、2015〜2019年の年間平均新規罹患患者数は約60,000人と推計されている。がん領域のトップ製薬メーカーである中外製薬では、このうち約20%といわれるHER2陽性乳がん患者に対し、手術不能または再発乳がんへの新たな治療選択肢として、「パージェタ」の適正使用を推進していくとしている。(長澤 直)
▼外部リンク
中外製薬株式会社 プレスリリース
http://www.chugai-pharm.co.jp/