日常生活への支障・制限、社会の経済的負担を推計試算
バイエル薬品株式会社は、日本人女性19,254人を対象とした月経随伴症状に起因する日常生活への負担と、それに伴う社会経済的負担に関する研究結果を発表した。同社からの公表に加え、英医療経済学専門雑誌「Journal of Medical Economics」オンライン版に現地時間の9月10日付で掲載されている。
この研究は、月経痛をはじめとするすべての月経随伴症状のMenstrual Distress Questionnaire(C)(MDQ(C))重症度分類による評価を、一部改変した日本語版のmMDQを用い、国内で初めて実施したものであり、また経血量に関する認識を評価、月経随伴症状に起因する心身的および経済的な負担を評価した調査結果となっている。
調査は、2011年5月21日から26日、および6月17日から21日の期間に、日本全国の月経のある女性、15歳から49歳の19,254人を対象に、オンライン調査で行った。対象者は、日本全体の年齢や地域分布に近づけて抽出している。
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約74%に悩みあり、通院経験は2割程度にとどまる
月経痛や集中力の低下、行動の変化、自律神経失調、水分貯留、否定的感情など、主な月経随伴症状がある女性は、回答が得られた全体(n=18,174)の約74%にも上った。とくに月経痛は月経ありの全体(n=19,254)の約50%に認められ、過多月経は約19%だったという。
しかし、こうした悩みがあるものの、実際にその症状で通院経験がある女性は全体の20.4%にとどまっていることも分かった。一方、過多月経と感じている女性の場合は、通院割合が高く、労働への影響も、より顕著にみられたという。過多月経の調査対象者における症状の重症度の増悪は、日常生活への支障・制限の増加と直接関連していることも分かった。通院費用や市販薬の費用、加えて労働損失の推計値を合計して試算した、社会への年間経済的負担は、6,828億円にもなったという。このうち全体の72%が労働生産性の損失によるものだった。
今回の研究結果により、月経随伴症状を有する女性の多くは、症状が重度であっても積極的に受診しておらず、結果、社会にとっては、大きな個人的負担とともに労働生産性の損失を伴う経済的負担が生じていることが明らかになったといえる。
研究に参加した共同著者の東京大学大学院産婦人科学講座教授 大須賀穣氏は、この研究データを医療従事者はもちろん、広く一般に伝えてゆくことで、早期の受診啓発につなげるべきとしている。
また、同じく共同著者となっている聖路加国際病院女性総合診療部部長 百枝幹雄氏は、月経痛が高頻度にみられる女性は、将来の子宮内膜症発症のリスクが2.6倍と高くなることも分かっており、子宮内膜症は未治療で放置しておくと不妊の原因となる可能性があることから、月経の重さを感じている場合には、早期の受診が望まれるとコメントした。(紫音 裕)
▼外部リンク
バイエル薬品 ニュースリリース
http://byl.bayer.co.jp/html/press_release/2013/
Journal of Medical Economics 該当研究報告
http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3111/