オンライン科学雑誌「PLOS ONE」に掲載
独立行政法人理化学研究所統合生命医科学研究センターと慶應義塾大学医学部整形外科脊椎外科研究グループは、思春期特発性側彎症(AIS:Adolescent Idiopathic Scoliosis)の重症化に関連する新たなゲノム領域の発見を、9月5日発表した。
(画像はプレスリリースより)
理研同センター骨関節疾患研究チームと、同大学側彎症臨床学術研究グループとの共同研究グループによる成果。オンライン科学雑誌「PLOS ONE」に日本時間9月5日付で掲載された。
これまでに2つのAIS関連遺伝子を発見
背骨が曲がる疾患である側彎症は、その多くが原因を特定できない特発性。中でも発症頻度が高いのが、思春期に起こるAISで、世界人口の約2%が発症している。AISの発症と進行には遺伝的要因が関与していると考えられており、研究グループはゲノムワイド相関解析によって2011年に「LBX1」を、2013年5月に「GPR126」を発見している。しかし、これらの遺伝子は発症に関与したが、重症化への関連性は確認できなかった。
日本人と中国人に共通のゲノム領域
研究では、日本人AIS患者のうち重症群(側彎の角度が40度以上)だけ、および対照群の合計12,000人について、55万個の一塩基多型(SNP)を2段階相関解析で調査した。その結果、重症化と強い相関を示すSNPが17番染色体上に見つかったという。この相関は、中国人の集団でも同様に確認できた。日本人と中国人に共通した重症のAISに関連するゲノム領域を同定したのは世界でも初めてである。
見つかったSNPは、SOX9とKCNJ2という骨系統疾患の原因遺伝子の近くに存在しており、その症状に側彎症を含んでいることから、AISとの関連が強く示唆されると説明。この遺伝子との関連を今後さらに詳細に研究し、分子レベルでのAISの病態の理解を進めることで、治療法が新たに開発されることが期待できるとしている。(長澤 直)
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独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
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