全エクソーム解析で原因遺伝子を特定
横浜市立大学学術院医学群 遺伝学 才津浩智准教授、松本直通教授らの研究グループは、小児の難治性てんかんの原因遺伝子の一つをつきとめたと発表した。この発見は、細胞内シグナル伝達の異常という新しいてんかんの発症メカニズムを示すものとなるという。
この研究は、山形大学、浜松医科大学との共同研究の成果であり、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している「研究開発プロジェクト」によるものである。
(画像はプレスリリースより)
小児期に発症したてんかんの70~80%は治療で発作を完治させることができるが、抗てんかん薬によるコントロールが難しい難治性てんかんも多い。有効な治療法の開発には原因遺伝子の解明が必要とされている。
共同研究グループは、ゲノムのタンパク質を決める部分を全て解析する全エクソーム解析を用い、難治性てんかん患者379例中の4例にGNAO1遺伝子の新生突然変異を認めたと説明。4名の患者には難治性てんかんの他に、知的障害、運動発達障害があり、その中の2名には意図しない異常運動が起こる不随意運動が見られたという。
原因遺伝子GNA01とは
今回特定した難治性てんかんの原因遺伝子GNA01は、両親には認められない新生突然変異である。この遺伝子から3量体Gタンパク質のαサブユニット(Gαo)が作られるが、Gαoは神経細胞における細胞内シグナル伝達に関与することが知られている。
正常および変異 Gαoを発現させた結果、正常型では細胞膜への局在だったのに対し、3つの変異Gαoは細胞膜だけではなく細胞質にも局在が見られ、タンパク質の安定性などに影響をおよぼしていた。その一つとして、カルシウム電流の異常が引き起こされることがわかったという。
この結果により、細胞内シグナル伝達の観点でてんかんの病態解明が進み、難治性てんかんの新しい治療法の開発に寄与することが期待されるとしている。(馬野鈴草)
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