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大塚製薬、米バイオベンチャー買収―癌領域の強化と創薬基盤獲得

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2013年09月09日 AM09:45

大塚製薬は、米バイオベンチャー「アステックス・ファーマシューティカルズ」を買収し、完全子会社化すると発表した。買収額は、約8億8600万ドル(約883億円)。重点分野に位置づける癌領域の開発パイプラインを強化すると共に、疾患に関与する標的蛋白質に対し、分子量300以下のフラグメントを組み合わせてリード化合物に最適化する「フラグメントベースドドラッグディスカバリー」(FBDD)の創薬基盤を獲得した。大塚ホールディングスの樋口達夫社長は、5日の記者会見で、「アステックスはフラグメント創薬では世界トップ企業。大塚の創薬アプローチにアステックスの技術を加え、革新的医薬品を創製したい」と語った。

樋口社長

アステックスは1991年に設立し、英ケンブリッジにフラグメント分子設計創薬研究所、米カリフォルニアに臨床開発部門を持つ。従業員は137人で、2012年度の売上高は8315万ドル。エーザイが販売する急性骨髄性白血病治療薬「ダコジェン」(一般名:デシタビン)を開発した実績をはじめ、第II相試験段階にデシタビンのプロドラッグ皮下注製剤やHSP90阻害剤「AT13387」など4化合物、臨床に入った品目を含めると8化合物を保有する。そのうち、ノバルティスやアストラゼネカなど他社提携で開発している案件が半数に上る。

売上の大半を占める抗精神病薬「エビリファイ」の米国特許切れを控える中、今回の買収の意義について樋口氏は、「2020年に向けた長期の投資と考えている」と述べた。癌領域では、オンコセラピーサイエンスと共同開発する癌ワクチンや、グループ会社の大鵬薬品が強みとする代謝拮抗剤などに加え、新たに分子標的薬の開発パイプライン5品目を拡充した。また中枢神経系領域では、第I相試験段階にアルツハイマー病を適応症としたBACE阻害剤「AZD3293」を獲得している。

開発パイプラインのみならず、アステックスが持つFBDDの創薬技術を手中に収め、化合物探索での研究基盤を強化する。X線を用いた結晶構造解析をもとに、従来の化合物スクリーニング手法「ハイスループットスクリーニング」(HTS)では、薬理活性が測定できないような小さな分子と標的蛋白質の結合度合いを測定。その後、分子量の小さいフラグメントの組み合わせによって、高活性のリード化合物の創製につなげる。リード創製までの期間短縮や開発の成功確率向上に結びつけると共に、従来の手法では困難だった難易度の高い標的蛋白質に対する創薬研究を加速させる。

樋口氏は、「わずか8年で八つの化合物を臨床入りさせるなど創薬能力は高い」と評価。買収後の事業体制について、「無理に融合させるのではなく、アステックスがやりたい研究開発を支援していくマネジメント体制にしたい」との考えを示した。癌・中枢神経系を強化するだけでなく、新規領域での研究開発にも乗り出す方向だ。

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