■官が主導し薬農マッチング
厚生労働省と農林水産省、日本漢方生薬製剤協会は、漢方薬や生薬製剤に用いられる薬用植物の国内栽培を拡大するため、生産農家と漢方薬メーカーをマッチングする「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を今月からスタートさせた。1日の北海道を皮切りに、20日には関東、26日に北陸で開催し、来月までに全国8カ所で実施していく予定。ブロック会議を通じて、生産者と漢方薬メーカーがニーズや情報を共有し、国内栽培の必要性が高い生薬の産地化を推進していく考えだ。
生薬原料のほとんどが、中国など海外からの輸入に依存し、国内生薬の安定確保が課題となる一方で、薬用植物栽培を通じて、地域振興に取り組む地方自治体も増えている。こうした状況を受け昨年11月から、厚労省医政局経済課と研究開発振興課、農水省生産局農産部地域作物課が情報交換会を実施。国主導で農業と医療が結びつく新たなビジネス展開に取り組んでいる。
一般的な取引市場がない薬用植物では、漢方薬メーカーと農家が個別に契約を結んで、国内生産が行われてきたため、メーカーが別の地域で生産を拡大したい場合に、栽培をどこに依頼するかが分からなかったり、農家も薬用植物を生産したくても、収益に見合う需要度の高い生薬をどう選べばいいか、さらにその売り込み先が分からないというミスマッチがあった。情報交換会では、薬用植物の産地化を実現するためには、需要と供給に関するマッチングの場が必要と判断。全国を8ブロックに分け、生産者と実需者が顔を合わせた説明会を実施している。
関東ブロックでは、10都道府県の地方自治体、地域の農業協同組合の関係者など約80人が参加した。農水省が薬用植物をめぐる生産や輸入などの状況、厚労省が漢方薬の現状とその取り組みに関する説明を行った。さらに漢方薬メーカーなどで構成された日漢協が、国内調達が必要となる生薬リストを提示し、参加者に対して薬用植物栽培への協力を改めて要請した。医薬基盤研究所の薬用植物資源研究センターも参加し、マッチングを支援している。
日漢協が行った会員社の漢方薬メーカーに対するヒアリング結果によると、国内調達が必要な生薬は、全体の取り扱い品目の半数となる約100種前後。ただ、生薬栽培をめぐっては、土地の確保や土壌、気候を考慮する必要があり、収量や品質などの点から、どの地域にどの生薬が適しているかや、どういった栽培手法を取り入れていくかが検討課題となっている。
質疑応答では、参加者から「栽培を行う上で何をすべきか」「収量はどの程度見込めるのか」などの必要な事前準備や収益性に関する質問が挙がった。一方、薬用植物の栽培が進んでいる北海道のブロック会議では、生産を前提とするような質問が見られ、関心が高かったという。
今後、ブロック会議を進め各地域に情報提供を行い、薬用植物を栽培したい産地が出た場合には、各都道府県を通じて要望書を提出する形での提案を行っている。既に農水省では、薬用植物栽培に必要な農薬の登録や、耕作放棄地の有効活用に向けた土地改良などの費用を交付金で支援する事業に関して、2014年度予算で要求していくことも検討中。国内生薬栽培の拡大に向け、さらなる支援措置を検討していく方針だ。