従来法より高感度でウイルスを検出
独立行政法人産業技術研究所は、従来のイムノクロマトグラフィ法のような簡易検査法では判別できない亜型のインフルエンザウイルスも識別できる小型高感度センサの開発に成功した、と8月21日発表した。
(画像はプレスリリースより)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDOの産業技術助成事業(若手研究グラント)による成果。
光学特性モニターで高感度・簡易化
このセンサ技術は、検出チップ上にウイルスなどを捕捉し、チップ表面の変化を反射光の特性(光の強さなど)をモニターして短時間かつ高感度で検出するというもの。従来の簡易検査法に比べて1〜2桁高い感度での検出が可能だ。
新型インフルエンザの早期発見に
現在のインフルエンザ検査の感度では、罹患してから1.5日以上経過しないと検出できない。そのため、新型インフルエンザなどの爆発的な感染拡大の阻止には、ウイルス濃度が低い潜伏期でも検出できるように、さらに高い感度でより早期に感染を確認する方法が必要となっている。
産総研では、ITによる生活安全技術の研究開発で感染症対策を目指しており、新しい検出原理による導波モードセンサを考案、表面プラズモン共鳴法(SPR)よりも高い感度であることを実証してきた。今回はこの技術を新型インフルエンザウイルスの分析装置として小型化・高感度化を狙った。
2種の標識物との反応の違いでウイルスの亜型を識別
インフルエンザウイルスの識別には2種のシアル酸でコーティングした金ナノ粒子を標識として使用。A型の亜型の一つH3N2と鳥インフルエンザの1つH5N1の赤血球凝集素について、センサで検出試験を行ったところ、2種のインフルエンザウイルスが識別できた。
実験では、ウイルスと標識抗体液を混合して10分、センサ上に滴下後30分で測定。イムノクロマトグラフィや、直接吸着法ELISA、サンドイッチ法ELISAよりも1〜2桁高感度であることがわかった。また所要時間の短さや前処理の簡便さで、従来技術より圧倒的優位であるとしている。
他分野への応用も可能
また、センサ内のチップを変更することで、ウイルスだけでなく、カドミウムや鉛などの重金属の検出や、めっき液などの工業溶液のモニタリングにも応用できる。
今後はこの技術の実用化を図り、新規事業として環境中のインフルエンザウイルスのセンシングも目指す。この技術は、8月29日(木)・30日(金)に東京ビッグサイトで開催されるイノベーション・ジャパン2013でも試作品の展示とデモが実施される予定になっている。(長澤 直)
▼外部リンク
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構プレスリリース
http://www.nedo.go.jp/