がん細胞で過剰に増加するタンパク質
医薬基盤研究所は大腸がんの浸潤・転移に関するタンパク質を発見した。新規の作用機序による抗がん剤開発が期待できる。研究成果は英科学誌Journal of Cell Scienceの電子版に8月1日掲載された。
(画像はプレスリリースより)
大腸がんは周囲の臓器などに転移した場合、抗がん剤治療を行うことが多い。近年、分子標的抗がん剤の開発が盛んになり、効果が高く副作用の少ない治療法が求められている。
研究グループは分子標的抗がん剤の新規ターゲットとなるタンパク質の発見を目指してきた。正常な細胞とがん細胞を比較すると、がん細胞では特異的に量が増えるタンパク質を見つけることができる。それらのタンパク質の働きでがん細胞は増殖し、浸潤・転移していく。
今回、研究グループは、大腸がんで、過剰なFAM83Hの増加を発見し、浸潤・転移を促進させていることをつきとめた。
増加したタンパク質ががん抑制因子と結合
大腸がんになると、秩序だって配列されている大腸上皮細胞の配列の仕組みに異常が起こる。その結果、がん細胞は大腸組織から離れて別の組織に転移する。FAM83Hは配列に必要な細胞骨格、ケラチン骨格を制御しているが、このタンパク質が過剰に増加するとケラチン骨格を壊してしまうことがわかった。
また過剰に増加したFAM83Hががん抑制因子のカゼインキナーゼ1αと強く結合するために、その機能を阻害しケラチン骨格を崩壊させることも明らかになった。つまり大腸がんの浸潤・転移にFAM83H とカゼインキナーゼ1αの強い結合が関わっていると考えられる。
今後、この結合を阻害すればがんの浸潤・転移を抑制できる可能性があり、阻害剤が新タイプの治療薬となることが期待される。(馬野鈴草)
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独立行政法人医薬基礎研究所プレスリリース
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