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京都大学、多能性幹細胞から生殖細胞の誘導に成功

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2013年08月07日 PM05:13

3種類の転写因子導入で誘導

京都大学(京都府京都市)は、マウス胚性幹細胞(ES細胞)から3種類の転写因子の遺伝子で始原生殖細胞を誘導できる培養系を開発したと、8月5日発表した。

(画像はwikiメディアより引用)
8月4日のNatureオンライン速報で公開されている。

JST ERATO領域研究での成果

研究は医学研究科斉藤通紀教授と博士課程在学の中木文雄氏らの研究グループ。斉藤教授は、科学技術振興機構ERATO研究統括、物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)主任研究者、iPS細胞研究所研究員を兼任。本研究は、ERATO「斎藤全能性エピゲノムプロジェクト」(平成23〜28年度)で得られた成果である。

誘導した精子から正常なマウス

多能性肝細胞であるES細胞やiPS細胞は、いかに多様な細胞に分化を誘導するかが大きな課題の一つであるが、始原生殖細胞(精子や卵子の元になる)を直接誘導する遺伝子は特定されていなかった。

今回の発表によると、ES細胞を分化させたエピブラスト様細胞(EpiLCs)に、Blimp1、Prdm14、Tfap2cの3種の遺伝子を発現させることで、始原細胞様の細胞を得られ、この細胞を不妊の雄マウスの精巣に移植すると正常な精子がつくられた。さらに、この精子を正常な卵子と体外受精させ、健常なマウスを得、このマウスに生殖能力があることを確認した。

高効率・短時間での誘導が可能

ES細胞からエピブラスト様細胞間での誘導に36〜48時間、エピブラスト細胞の凝集塊に3種の転写因子遺伝子を発現させ、36〜72時間で始原生殖細胞様細を誘導できる。3種の遺伝子群を直接発現させることで、高効率、短時間での誘導が可能になっている。この3種の転写因子により誘導した始原生殖細胞様細胞をTF-PGCLCs(Transcription factor-induced primordial germ cell like-cells)と命名した。

エピブラスト細胞への誘導がカギ

この生殖細胞への分化誘導法は、従来検討されてきたサイトカインによる方法より効率がよく、短時間での誘導が可能である。また、ES細胞にこれらの遺伝子を直接発現させてもTF-PGCLCsは得られないことから、エピブラスト細胞への分化がポイントであることも判明。iPS細胞では未実施であるが、同様に誘導可能であると考えている。

生殖細胞の発生課程はいまだ不明なことが多く残されている。今回の発表は、ほ乳類の生殖細胞が特定の遺伝子によって誘導されることを示した世界初の発見である。これら誘導遺伝子の解明は生殖細胞形成過程のさらなるメカニズム解明にもつながる。今後ヒト細胞への応用には倫理上の課題もあるが、多能性幹細胞の活用に新たな一歩が踏み出されたといえる。(長澤 直)

▼外部リンク

京都大学プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/

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