妊娠中の母親のアルコール摂取は胎児の中枢神経系の発達に有害な影響を持っているという報告は、以前から様々な形で挙げられていましたが、生まれた子どもの記憶に悪影響が及ぶという新たな報告が寄せられました。
サイクリン依存性キナーゼが異常に活性化することと、アルツハイマー病や、薬物依存には関係があるとされているので、この物質が海馬の正常な働きを妨げることは様々な問題につながることが予測されるのです。
今回のラットを使った実験の報告でも、妊娠中にアルコールを飲んでいる母親から生まれた子は、中枢神経に影響を受けていることがあることが確認されました。これは、生まれてきた子に迷路を歩かせたときに、アルコールを飲んでいない母親から生まれたラットは、迷路の障害物の位置などを覚えることができたのに、アルコールを摂取した母親から生まれたラットでは、繰り返し同じ迷路を歩かせても、道筋を覚えることができなかったことで明らかになりました。
アルコールを摂取した母親から生まれたラットの脳を調べたところ、海馬という部分で、サイクリン依存性キナーゼという物質が活動をはじめます。海馬は、記憶を司ることで知られており、記憶を整理して長い間思い出せるようにしたり(長期記憶)、不要と判断した記憶は消去したり(忘却)する働きがあるのです。
この調査は、ヒトを対象にしたものではありませんが、同じ哺乳類であることから、ヒトにもあてはまる可能性が高いそうです。妊娠中は、思わぬストレスからお酒を飲みたくなる女性もいるようですが、生まれてくる赤ちゃんのことを考えて、キッパリと断酒する強さを持ちたいものです。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
A new treatment for cognitive disorders related to in utero exposure to alcohol(PDF)
http://www.sjzsyj.org:8080/Jweb_sjzs/CN/article/