国際医療研究センターが発表
独立行政法人国立国際医療研究センター(東京都新宿区)糖尿病研究部による、2型糖尿病患者において重症低血糖が心血管病リスク上昇と関連する、という論文が、7月29日発行のBMJに掲載された。
(画像はwikiメディアより引用)
ACCORD試験後の危惧
2008年に米国糖尿病学会学術集会で報告された大規模臨床試験であるACCORD試験において、厳格な血糖管理により総死亡率が22%増加したとのことから、厳格な血糖管理で高頻度に出現する重症低血糖と心血管イベントとの関係について、関心が高まっている。
過去の報告から定量的に分析
同センターでは、ランダム化比較試験での検証が難しい重症低血糖の心疾患リスクに及ぼす影響について、観察研究で問題となる交絡を定量的に評価するバイアス分析を行った。
Medline、Embase、Cochraneライブラリ、Web of Scienceの4つの電子データベースで2型糖尿病患者における重症低血糖と心血管病リスクとの関連を報告した文献を網羅的に検索・収集し、各研究結果を変量効果モデルでメタアナリシスし、併存する重篤疾患による交絡があると過大評価につながるため、バイアス分析によりその影響を定量的に評価した。
重症低血糖により2倍以上リスクアップ
その結果、3443文献中、6報が該当し、対象者数合計903,510名において、重量低血糖が0.6〜5.8%の頻度で発生。メタアナリシスの結果、重症低血糖の心血管病リスクは2.05倍であった。
これから、心血管病予防のためにも、重症低血糖を起こさずに血糖管理する重要性が明らかになった。
糖尿病患者が世界の人口の2.8%といわれる現代において、糖尿病患者の血糖管理は医療の大きな比重を占める。血糖管理は医療現場だけではコントロールできないが、心血管病の危険性が明確になり、よりその重要性を意識づけできるだろう。(長澤直)
▼外部リンク
独立行政法人国立国際医療研究センター糖尿病研究部
http://ncgm-dm.jp/renkeibu/bunken_47.html