米学会誌オンライン版に発表
東京大学医学系研究科の津久井達哉特別研究員、上羽悟史講師、松島綱治教授らの研究グループは、7月22日、活性化繊維芽細胞による肺繊維化メカニズムの一端を解明したと発表した。
(画像はwikiメディアより引用)
7月22日付のThe American Journal of Pathologyオンライン速報版で公開された。
治療法のない肺繊維症
根本的治療法のない特発性肺繊維症等の肺繊維化は、肺の上皮組織が慢性炎症によりI型コラーゲン等の細胞外マトリクスで固くなるため、呼吸困難となる致死的疾患。国内で1万人以上いるが、詳しいメカニズムがわかっていない。
その病態形成には、悪玉細胞である繊維芽細胞の活性化と移動が大きなポイントとなっている。活性化した繊維芽細胞が、病変部位に集積し、大量のコラーゲンを産生することがこれまでにわかっていた。
繊維芽細胞の動的平衡
今回の発表で、研究グループはブレオマイシン誘導生肺繊維症モデルマウスを用いて解析。I型コラーゲンを大量生産する活性化繊維芽細胞の量的・質的変動を明らかにした。
その結果、従来の説と異なり、繊維化部位における活性化した繊維芽細胞は、数が増えるのではなく、繊維化部位に移動して集まってくること、この繊維芽細胞ではオステオポンチンほか細胞外高分子や、細胞周期・細胞移動に関わる分子の遺伝子発現が亢進していることがわかった。オステオポンチンは、繊維芽細胞の繊維化部位への移動を促進している可能性も示唆されている。
この研究は、JST課題達成型基礎研究の一環として、東海大学、京都大学、金沢大学との共同研究で実施された。研究グループでは、この繊維芽細胞の活性化と、増殖と細胞死の動的平衡状態、細胞移動の分子制御をさらに明らかにすることで、肺繊維症の新たな治療や診断・予防法につながるとしている。(長澤 直)
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科学技術振興機構JSTプレスリリース
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