微小がん細胞と再発率の関係
大阪大学の研究グループは第2病期大腸がんのリンパ節に存在する微小転移が術後の再発率を規定することを明らかにした。
(Wikiコモンズを利用)
大腸がんは手術でがんを取っても一定の割合で転移・再発する。リンパ節に転移巣がある第3病期では約30%が再発するため、術後に全員に抗がん剤治療で再発を予防している。一方、リンパ節転移のない第2病期では15~20%が術後に転移・再発するが予防的な治療は行っていない。リンパ節の転移診断をする際に病理検査で転移巣が見つからなくても、微小転移が生じている可能性はある。
研究グループは、第2病期で手術を受けた約300例の大腸がん患者のリンパ節を分子生物学的検査のRT-PCR法で調べ、転移・再発の有無を5年以上経過観察し、微小転移量との関係を調べた。その結果、リンパ節中のがん細胞量が少ない場合、5年以内の再発率は6.6%、がん細胞量が多い場合は27.4%だった。リンパ節中のがん細胞が多いと第2病期でも再発のリスクが高いことがわかった。
第2病期にも予防対策を
アメリカの臨床腫瘍学会(ASCO)では10年前から第2病期大腸がんの再発危険群を同定する臨床研究の必要性を説いていたが、臨床に応用できるレベルの成果は得られなかった。研究グループは今回の成果を得るために10年間をかけた。
今後、第2病期でも再発を注意すべき患者を特定でき、予防対策を講じる目安となることが期待される。大阪大学では近く大腸がん手術を受ける患者に微小転移のルーチン検査を開始する予定だ。(馬野鈴草)
▼外部リンク
大阪大学プレスリリース
http://www.osaka-u.ac.jp/