土橋氏は、米国のCDTMとは、医師と薬剤師の共同実務契約に基づき薬剤師に補助的な処方権が委譲され、プロトコールに沿って投与量、投与方法、投与期間などを薬剤師が調整する仕組みと説明した。
一方、2010年の厚労省医政局長通知では、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務として「薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること」を掲げている。
土橋氏は「法整備の上で薬剤師が補助的な処方権を獲得し、実践することは未来に向けた目標であると思ってはいるが、米国の医療制度によるCDTMと、医政局長通知は決して同等、同質ではない」と指摘。この違いの認識があいまいなまま、CDTMという用語が各病院や薬局でそれぞれに解釈され、普及していることに危機感を表明した。
ただ、「CDTMという用語の利用は止まらない。それならば、せめて『CDTM/J』などの呼び方はどうか」と提案。日本版共同薬物治療管理は、米国のCDTMとは異なることを何らかの形で表す必要があるとした。
近年、日本では「処方設計支援を行っている病院薬剤師の姿が大きくクローズアップされるようになった」と土橋氏は解説。ワルファリンなどの投与量や投与期間、投与方法を薬剤師が設計したり、がん化学療法の支持療法では薬剤選択段階から薬剤師が処方設計に大きく関わったりするようになった。これらの病院では、カルテ記載の権限を持った薬剤師が、薬剤師名をカルテに残して処方設計を提案し、医師によって承認されるとそれが医師名の処方になるという運用がなされていることを紹介した。
■保険薬剤師資格を更新制に‐飯島上田薬剤師会会長
21日には、日本薬剤師会前常務理事で上田薬剤師会会長の飯島康典氏がシンポジウム「開局薬剤師の将来像:これからの『薬剤師』の話をしよう」で講演し、薬局や薬剤師の質を担保するために保険薬剤師の資格を更新制にするなど、様々な提言を行った。
飯島氏は、薬剤師の質を保つため保険薬剤師の資格を「3年くらいで更新したらいいのではないか」と提案した。また、薬局の質を担保するために、薬局の数を規制して適正化したり、薬局の規模を決めたりする必要があると指摘。薬局の世襲制を廃止するほか、「調剤報酬を株式配当に充てられないような税制改正をするべき」と語った。
一方、患者との対面業務を拡充させるために、調剤の簡素化やロボット化、箱出し調剤の導入など調剤業務の見直しを進めることを提言。事務員を調剤に活用する仕組みを明確にしたドイツの取り組みを見倣って、保険薬局に従事する職員の業務の明確化にも取り組む必要があるとした。
これらのことは、組織として日薬が提案しなければ実現しないとし、「国民から評価されるように理想と現実を限りなく近づける。これは組織を上げてやらないといけない」と強調。
「日薬は1997年に『薬局のグランドデザイン』を策定したにもかかわらず、その評価検証をしていない。画に描いた餅になっている。『薬剤師の将来ビジョン』も作ったが、ロードマップはない。どうするのか。これではわれわれの行く方向が見えない」と語った。
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