調査には近畿2府4県の病院薬剤師会が協力。今年2月時点で同加算を算定している同圏内の病院のうち、調査に前向きな姿勢を示した174病院を対象に実施し、151施設から回答があった(回答率86・8%)。各施設の薬剤部長に施設や薬剤部の現状を聞いたほか、実際に病棟薬剤業務を担当している1542人の薬剤師のうち1143人から回答を得た(回答率74・1%)。神戸薬科大学薬学臨床教育センターが事務局となってデータを取りまとめた。
現場の薬剤師に対しては、同加算算定後の患者や看護師、医師との関係性の変化、薬剤師自身の変化、業務の変化、総合的評価など78問を聞いた。「非常にそう思う」から「全くそう思わない」など5段階で回答してもらった。
総合的評価として薬剤師のモチベーションの変化を聞いたところ、17%が「やりがいを強く感じる」、50%が「やや感じる」とした。約7割の薬剤師が病棟薬剤業務にやりがいを感じていることが明らかになった。
また、薬物治療のリスク回避については23%が「非常に貢献できる」、59%が「やや貢献できる」だった。チーム医療への効果についても21%が「非常に貢献できる」、57%が「やや貢献できる」とし、多くの薬剤師が病棟薬剤業務の効果を実感していることが分かった。さらに、病院収益への貢献も21%が「非常にそう思う」、57%が「ややそう思う」と回答した。
患者や看護師、医師との関係性の変化について「非常にそう思う」「ややそう思う」など前向きな回答が多かった項目としては、▽患者のことをより深く考えるようになった▽看護師との距離が近くなった▽看護師と会話する時間が増えた▽医師や看護師に、患者のことについて質問する機会が増え、薬について質問される機会が増えた▽処方提案する機会が増えた――などが挙がった。
薬剤師自身の変化としては、▽薬のことは薬剤師にという意識が高まった▽患者の処方薬に対する責任感が強くなった▽検査データなど情報を収集する時間が増えた▽検査値について深く知ろうという意識が高まった――などの項目で前向きな回答が多かった。
データの取りまとめを担当した神戸薬大准教授の長谷川豊氏は「カルテ、検査データなど患者情報を収集する時間が増えることで、処方内容をより深く考え、処方に対する責任感も強くなってきていると思われる」と話す。
一方、同加算の算定に当たって薬剤師の人員が「増えた」施設は34%にとどまり、「変わらない」が62%だった。同加算算定後、現場の薬剤師は、▽残業時間が増えた▽有給休暇を取りにくくなった▽自由な時間が減少した――などを強く実感していることが分かった。必要な薬剤師数を確保することの重要性を示す結果にもなった。